未知の世界にロマンと危険あり!映画で学ぶ“宇宙開発の歴史”
マーキュリー計画の選ばれし男たちと、影から支えた女たち
一方、宇宙開発で出遅れていたアメリカだったが、スプートニク・ショック以来、早期にアメリカ航空宇宙局(NASA)が創設され、マーキュリー、ジェミニ、アポロなど、現在のディスカバリー計画に至るまで、数々のプロジェクトが実行されてきた。
『ライトスタッフ』(83)は、有人飛行を目的とした「マーキュリー計画」の飛行士として選ばれた7人の男たちを題材にしており、1961年にアメリカ初の有人宇宙飛行を行ったアラン・シェパードから、アメリカ人最後の単独飛行となっているゴードン・クーパーまで、“マーキュリー・セブン”と呼ばれたパイロットたちが、NASAへの不満や意見の対立などを乗り越え、次々と宇宙へと飛び立っていく姿が描かれている。
同じく、この「マーキュリー計画」を題材としているのが『ドリーム』(16)だ。本作は、NASAで計算手として働いていたところ、優秀な頭脳を買われてスペース・タスク・グループの一員となった黒人女性キャサリンを中心に、3人の黒人女性が職場にはびこる差別と戦いながら、宇宙開発の場で活躍したという知られざる真実を描いている。そんな彼女たちが取り組んでいたプロジェクトが、1962年のアメリカ初となったジョン・グレンによる地球周回飛行。ガガーリンの有人飛行から約10か月ほど遅れての成功となったが、本作でも、ソ連に対するアメリカの焦りなど、当時のNASA内部の様子を確認できる。
前人未踏の偉業、そして“成功した失敗”
1966年3月16日には、続く「ジェミニ計画」で、史上初の宇宙船同士のドッキングに成功したアメリカ。このジェミニ8号に船長として搭乗していたのが、かの有名なニール・アームストロングだ。
『ファースト・マン』は、彼がこの3年後の1969年7月21日に成し遂げることになる、人類初の月面着陸および、他天体からの帰還という偉業を、ミッションの立ち上がりから、過酷な訓練の実態、トラブルによる仲間の死、地球で待つ家族の想いなど、余すところなく活写。アームストロングの知られざる数々のエピソードを細やかに洗い出しながら、誰もが知る“あの瞬間”までを描くことで、この前人未到の計画の新たな側面を感じることができる。
またIMAXの65mmカメラと35mm、16mmカメラを自在に使い分けた撮影や、宇宙船コクピット内部などを再現した徹底的なリサーチなどから成り立つハイクオリティな映像は、まるでアポロ11号に同乗しているかのような、アームストロングの味わった緊張や閉塞感、そして宇宙に解き放たれた開放感を体感することができるだろう。
全6回の月面着陸という成果を残した「アポロ計画」。しかし、宇宙という未知の領域ゆえに失敗もつきものだ。月面探査船計画で、唯一、月に到達できなかったアポロ13号がトピックとなっているのが『アポロ13』(95)だ。船長だったジム・ラヴェルのノンフィクションを原作とした本作は、月面到達まで目前に迫る中で起きた事故により、酸素の流出、電力の低下、クルーの体調不良など、山積みの問題を抱え瀕死状態に陥った宇宙船が、英知の限りを尽くした迅速な対応により、その困難を乗り越えて地球に生還するまでを描いている。
これら以外にも快挙や事故など、数々の歴史的な出来事が起こってきた宇宙開発。2019年は、史上初めてNASAの飛行士を乗せた民間企業スペースX社の宇宙船が打ち上げを予定していたり、同じく民間のボーイング社の無人宇宙船も打ち上げを予定と、革新的なスペースイヤーになること間違いなし。そんな一年を楽しむためにも、これらの映画から、危険と隣り合わせにあるロマンを感じ取ってほしい!
文/トライワークス
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