『ラ・ラ・ランド』の名コンビが明かす、最新作『ファースト・マン』に込めた想いとは?
そして「『ラ・ラ・ランド』の前にライアンと出会ってニール役を打診したんだ。すぐにライアンは興味を持ってくれたのだけれど、話しているうちになぜか話が逸れてしまって、ジーン・ケリーの話になった。それがきっかけで先に『ラ・ラ・ランド』を撮ることになったんだ(笑)」と意外なエピソードを明かしたチャゼル監督は、「おかげで彼ならニールをうまく演じてくれると確信することができたよ」とにこやかにコメント。それにはライアンも「チャゼル監督と仕事することのなにが好きかと言うと、彼はビジョンを明確に把握しているけど、こちらの意見もしっかりと受け入れてくれるところだよ」と明かし、2人の厚い信頼関係を窺わせた。
ライアンと言えば、作品のたびに入念な役作り をすることでも知られている、当代随一の演技派俳優の1人。本作に臨むにあたって彼が最も気を付けていたことを訊ねると、「ニールの息子さんたちや妹さんといった家族の方々がこの映画を観て納得して、そして彼らに認めてもらえること」だと語る。「フィクションの役を演じる時には自分の想像力でアプローチする。けれど実在の人物を演じる時には、すべての史実をいちから調べ直さなければいけない」と、与えられた役柄に真摯に向き合ったことを明かす。
そんな姿勢が功を奏したのか、ニールの家族から直々にお墨付きをもらったというライアン。「トロント国際映画祭でのプレミア上映の時に、ニールの2人の息子さんからこう言われたんだ。『子どものころからニールの息子としてどんな気持ちだった?と訊かれ続けていて、答えに困っていた。でも、この映画を観たらわかるよって言えるようになったよ』ってね」と、うれしそうな表情でその時のことを振り返った。
そして「宇宙飛行士の限られた技術と知識の中で、あれだけのミッションに挑んだこと。そしてものすごいプレッシャーの中でも家に帰るとゴミ出しをしたりとか、ありふれた日常が宇宙のメタファーと同じ軌道上に描かれるのが本作の魅力だ」と述べ、「アームストロングの人間味の部分や彼の過程生活を描くことがこのドラマには不可欠で、それが僕が脚本を読んで惹きこまれた部分だったんだよ」と、この役を演じられた幸せを語るライアンに、チャゼル監督も温かな微笑みをおくった。
取材・文/久保田 和馬