『アリータ:バトル・エンジェル』のロバート・ロドリゲスが語る、盟友キャメロンとの仕事
『タイタニック』(97)や『アバター』(09)のジェームズ・キャメロンが、構想20数年を掛けて木城ゆきとの人気コミック「銃夢」を実写映画化した『アリータ:バトル・エンジェル』(2月22日公開)。キャメロンから、メガホンを託されたのが、『シン・シティ』(05)のロバート・ロドリゲス監督だ。キャメロンの熱い思いを受け止め、本作をエモーショナルなスペクタクル・アドベンチャーに仕上げたロドリゲス監督にインタビュー。
空に浮かぶユートピア都市“ザレム”と、廃棄物が堆積した下層の街“アイアンシティ”の2つに分断された世界。アイアンシティで暮らすサイバー医師のイド(クリストフ・ヴァルツ)はある日、鉄クズの中から頭部だけが残されたサイボーグの少女を発見する。イドは彼女に機械の体を与え、「アリータ」と名付ける。アリータは、人間の男子ヒューゴ(キーアン・ジョンソン)と出会い、互いに惹かれあっていく。
ジェームズ・キャメロンとの信頼関係で生まれた撮影用の脚本
はじめにロドリゲスは、ジェームズ・キャメロン製作で本作を監督することになったプレッシャーについて「悪いプレッシャーはなかったけど、いままで僕が撮ってきた作品とはまったく違う映画なので、大きなチャレンジではあったよ」と答えてくれた。
「でも、僕は常にチャレンジすることが好きだし、ジム(ジェームズ・キャメロン)とは、25年以上の付き合いになる友人だ。彼は僕の先生というべきすばらしい人物だと思っているから、彼と一緒に、しかも彼のために映画を作ることは、非常におもしろい経験になると思ったんだ。それに、ジムは僕の相談にはきっとのってくれるだろうという安心感もあった。実際に心地良い現場だったし、一緒に作品を作っていてとても楽しかったよ」。
実は、キャメロン自身が手掛けた初期の脚本は186ページという長尺だったため、かなりの分量を削る必要があったとか。ロドリゲスがその脚本と約600ページの資料を結合させ、撮影稿にブラッシュアップしたそうだ。そんなロドリゲスが物語を構築するうえで、一番軸にした部分とは?
「おそらくジムのことをわかっていない人が脚本を手直しすると、アクションやスペクタクルなシーンを残し、いろいろな人間関係や周りのキャラクターを削っていこうとするんじゃないかな。でも、僕はその逆をやった。ジムは視覚効果やアクションの見せ方よりも、ストーリーやキャラクターの心を大事にする人だから。エモーショナルなドラマの部分を残し、アクションをたくさん切ったんだ。ジムにそうしろと言われたわけじゃなかったけど、僕は彼の下で映画を勉強してきたので、彼ならきっとこうするだろうと確信していたよ」。
実際に、キャメロンの反応はどうだったのか?「僕が短くした脚本をジムが初めて読んだ時、すごく驚いていた。どうやらお気に入りのドラマ部分が全部残っていたようで、しかも、僕が削ったスペクタクルなシーンがどんなシーンだったのかも思い出せないほど、脚本が違和感なくまとまっていたらしい。すごく気に入ってくれたし、僕のことをさらに信頼してくれたよ」。
プロデューサーとなったキャメロンは本作の撮影当時、ロドリゲスが監督として自由に采配を振るえるようにと、現場には1度しか顔を出さなかったと会見で話していた。「ジムは、『アバター』の続編の準備で忙しかった。彼はロスにいたけど、本作はテキサスで撮影されていたし。でも、なにか問題が起こると電話やメールですぐに返事をくれたよ。しかも、彼からのメールは毎回思いやりのある長文だった。撮影現場にはいなかったけど、精神的には、いつもそばにいてくれた気がする」。