どことなくジブリっぽい!『モータル・エンジン』で荒野を駆け回る移動都市たち
『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』三部作のピーター・ジャクソンが製作・脚本を務め、イギリス人作家フィリップ・リーヴの小説「移動都市」を映画化したSFファンタジー『移動都市/モータル・エンジン』(公開中)。最終戦争で文明が荒廃してしまった未来の地球を舞台に、生き残った人々が作り出した巨大な移動都市が小さな都市を喰うという、まさに弱肉強食の物語が展開される。
独特な世界観が持ち味の本作でまず目を引くのは、広大な荒野を駆け回る移動都市たち。車輪やキャタピラの上に様々な建造物が建てられ、ちょこちょことおもちゃのように動く様子がキュート。しかし、それらを“捕食”してしまう存在が巨大移動都市ロンドンだ。ロンドンは貴重な物資や資源を得るため、ほかの都市を住人ごと取り込んでしまう…。
これら動く都市のビジュアルは、どことなくスタジオジブリ作品『ハウルの動く城』(04)の城を連想させ、親近感を覚える人もいるかもしれない。こちらは車輪やキャタピラではなく、細い4本のアームで生き物のように移動するが、増築を何度も繰り返したような雑多な住居スペースはそっくり。さらに、本作には移動都市のほか、空に浮かぶ都市や赤い飛行船も登場する。これらも『天空の城ラピュタ』(86)のラピュタや『紅の豚』(92)の主人公ポルコの愛機を彷彿させる。とはいえ、『ハウルの動く城』の原作は1986年にダイアナ・ウィン・ジョーンズが出版した「魔法使いハウルと火の悪魔」で、2001年に出版されシリーズ化された「移動都市」とは全くの別物なのだ。
また、これら壮大なスケールの世界観を映像化したのは『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』も手掛けたピーター・ジャクソン率いるチームで、25年にわたってジャクソンに師事し、『キング・コング』(05)でアカデミー賞視覚効果賞に輝いたクリスチャン・リバーズが初めての長編監督を務めている。リバーズ監督は上記のジブリ作品を観ているとも言っており、少なからず影響を受けているのかもしれない。
圧倒的な力で世界の覇権を握ろうとするロンドンに、一人の少女を中心とした対抗勢力が立ち向かう本作。革新的な映像技術でスクリーンを駆け回る移動都市をぜひ劇場で堪能してほしい!
文/トライワークス