『天気の子』新海誠監督に、読者の疑問をぶつけてきた!野田洋次郎への愛の告白(!?)から、夏美の就職先まで一挙に解答
「劇中では、実在の場所がかなり忠実に再現されていましたが、そういった描写を行う意図はなんなのでしょうか?」(20代・男性)
「自分が馴染んでいたような景色も、ここ10年で大きく変わってきています。例えば『君の名は。』のラストに、千駄ヶ谷駅から三葉が駆けだしてくるカットがありますが、千駄ヶ谷の駅もそのころといまでは変わってきていますよね。毎回アニメーションのなかに現実の風景を描いていると、昔の作品には、絵として“あのころの東京”といったものが刻印されていることになります。そういう役割も、アニメーション映画としておもしろいものなのではないかなと思っています」
「一年間、住むとしたらどこの国のどこに住みたいですか?ただし、東京都、長野県以外で。また、その理由もあれば教えてください」(40代・男性)
「僕は1年半くらいロンドンに住んだことがあって。東京は憧れの場所だったけれど、そこにも慣れてきて、『もっと未知の場所に行ってみたい』という思春期めいた気分もあったのかもしれません(笑)。ロンドンもとても楽しかったんですけれど、東京に戻ってきた時になんだかとても安心したんです。それと同時に、自分が見てきた風景というものが、こんなにも人格に作用しているものなんだということも実感しました。『天気の子』にも鳥居やお盆の風習などが出てきますが、いまはそういった日本ならではのものをもっと掘ってみたいという気持ちが強いです。日本の地方都市には、いろいろと住んでみたいところはありますね。舞台挨拶などで日本各地を周るんですが、『イカしているな』と思う場所がたくさんあります」
「本作はセカイ系と捉えられることが多いですが、抵抗感はありますか?」(30代・男性)
「僕自身はセカイ系ということは一切、意識せずにつくっていました。それは昔からそうで、自分が気になっているテーマや、みんなが共有しているような気持ちを描いたことが、結果的にセカイ系と言われているだけだと思っています。SNSなどでは、いろいろとおもしろい広がり方をしてくれているのをよく目にします。すごくうれしいなと思っています」
「RADWIMPSに出会って、作品に対しての考え方が変わったりしたことはありますか?」(10代・男性)
「『君の名は。』より前は、『自分の作品のことを一番わかっているのは、自分だ』と思っていました。でもRADWIMPSからいただいた歌詞を見て、『彼らは僕以上に映画の大事な部分をわかっている』という感覚を突きつけられました。RADWIMPSと出会ったことで一番大きいのは、『自分の作品に対して、自分が絶対ではないんだ』ということを感じたことかなと思います。そう思える人と一緒にものづくりができるようになったことは、すごく幸運でした。仕事に向き合う態度もすばらしく、(RADWIMPSの野田)洋次郎さんは、今回『僕の力を全部使ってください』という気持ちで、献身的に取り組んでくださいました。ものすごくかっこいいなと思いましたし、僕、洋次郎さんを好きになりすぎてしまって(笑)。もし自分が女性だったら、ちょっと困るくらい好きになってしまっていたと思います」
「野田洋次郎さんからもらった言葉で、うれしかったことはありますか?」(30代・女性)
「洋次郎さんに『新海さんは、詩人ですね』と言っていただいたことです。僕は、洋次郎さんを稀代の詩人だと思っています。人々がほしい言葉をどこからか汲み上げて、それを伝えてくれる詩人。僕が一番好きだと思っている詩人に、『詩人ですね』と言われたことがものすごくうれしかったです」
「作業中に何かBGMなど聴きますか?集中出来る音楽を教えてください」(20代・女性)
「脚本を書いている時やビデオコンテを作っている時は、音楽があると気分が流されてしまうので、聴きません。絵を描く作業に入ると結構、聴いていますね。『天気の子』の作業中は、若いアーティストの方の曲を聴いていました。『ヨルシカ』や『ナナヲアカリ』、そしてアイドルソングもよく聴いていましたね。『君の名は。』で日本アカデミー賞の時に、プレゼンターをしていただいたのが『ももいろクローバーZ』の百田夏菜子さんだったんですが、お恥ずかしいことに僕はその時に『ももクロ』を知らなくて…。あとで聴いてみたら、ものすごくよくて!それからはよく『ももクロ』を聴いています。あと『BiSH』、『虹のコンキスタドール』、『lyrical school』など。10代の爆発的衝動のようなものが、アイドルソングにはあふれているように思うんです。その影響は受けているかもしれませんね。例えば、『ももクロ』の『走れ!』という曲がありますが、その衝動は、夏美が帆高に『走れ!』と言った気持ちともどこかつながっているような気がします」