『G-レコ』富野由悠季監督にインタビュー!「自分は作家だと言い切れない。仕事師だなという感じがしています」【後編】
「『ガンダム』があったから『G-レコ』が作れたんです」
――『G-レコ』で新しいことに挑戦したそのモチベーションはどこから来るのでしょうか?
富野監督「『ガンダム』は『ONE PIECE』や『ポケモン』みたいな長期シリーズの作品とは違うんだという根本的な部分を見誤っているんです。だけど、ガンプラのおかげでマーケットがなんとなく成立しているため、その問題を意識しないで済んでいる、とっても稀有なマーケットです。もちろん、『ガンダム』の独自性、マーケットの存在は認めます。だけれど、僕の立場からするとその存在を全否定するくらいにしなければ、『G-レコ』みたいなレベルの作品は作れないと、10年前に企画を立てた時から覚悟はしていました。それはしんどい仕事ですよ。いまもそのしんどさは少しも変わらないんだけれど、クリエイティブという白紙から物を作っていく立場の仕事をやっていく時に、このくらいのモチベーションを持たせてくれるフィールドがなければ作れませんね。自分1人の意思だけでは作れないんです。いままでとは違う、すごく変なことを言いますよ。『ガンダム』があったから『G-レコ』が作れたんです。仮想敵がなかったら『G-レコ』は絶対に作れなかった」
――今回の仮想敵には、TVシリーズの『G-レコ』も入っているのでしょうか?
富野監督「もちろんです。それこそ自腹でTV版26本の試作を作るなんてことはできないんです。だから、そういう環境があるというだけで、とんでもなくありがたいことです。でも、その環境になじんで慣れるのはいけなくて、もう少し環境に対して…。仕事師だから言うけど落とし前をつけておく必要がある。僕にとって映画版というのは、環境に対して落とし前をつけるということで、おそらく映画版ができ上がったら『G-レコ』は30年くらい保つでしょう。僕が仕事をしたのは30年でしかないんだけど、『ガンダム』でさえ40年もったんだから、おそらく4、50年は色あせない作品だと思います」