秀作を続々送り出す工房 ドリームワークス・アニメーションの大いなる25年間(その2)
12月20日(金)に公開となる『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』。同シリーズをはじめ、多くの傑作を生み出してきたドリームワークス・アニメーション(DWA)の、第1作『アンツ』以来の歩みを、代表作と共に辿る!
『マダガスカル』『カンフー・パンダ』の人気シリーズが始動
ドリームワークス・アニメーションが成功ばかりを重ねてきたわけではない。第2作『プリンス・オブ・エジプト』(98)を筆頭に、常に手描きアニメーションの可能性を探ってきたが、『シンドバッド 7つの海の伝説』(03)が大コケし、日本ではビデオスルーになってしまう。質的に悪いわけではないのだが、『ファインディング・ニモ』(03)の後ではこの手の王道系が古びて見えてしまった部分もある。一部で“ドリームワークス沈没”とも言われたこの作品は、手描きアニメーションからの撤退を余儀なくさせたうえ、確実にヒットが見込める路線、ディズニーとは異なる路線をさらに深く模索させる結果をもたらした。
『シュレック2』(04)を挟み、ドリームワークス・アニメーションが目指したのは、王道のカートゥーン。驚いて目玉が飛び出す表現などを用いたユーモアあふれる作品である。その先駆となったのが05年の『マダガスカル』だ。動物園でのびのびと暮らしていた動物たちが、突然大自然のジャングルで暮らすことになったら…という本作。体がキュッと伸び上がったり、驚いて口が極端に開いたりといった表現は、手描きアニメーションでは簡単だ。が、CGでパースが狂うような表現は大変難しかった。そこでドタバタ・ギャグのためのツールが新しく開発された。そうやってカートゥーン表現を技術的にも極める形で製作された本作は、全世界興収5・4億ドル超の大ヒット作となった。
ドリームワークス・アニメーションは着実に当たる続編の製作に舵を切る。『シュレック』も続編が4作まで製作され、第2作に登場した長ぐつをはいたネコの人気にあやかり、スピンオフ作品もつくられた。『マダガスカル』に至っては、08年に『2』、12年に『3』が生まれ、さらに第1作ではそれほど出番の多くなかったキャラクターのペンギンズの人気がジワジワと上昇。14年にはついにスピンオフ映画『ペンギンズ FROM マダガスカル ザ・ムービー』まで生み出される。この傾向は後々まで続いていくが、だからといって革新性の追求を緩めないのがドリームワークス・アニメーションの良いところだ。
その結果生まれたのが、カートゥーンの魅力に本格的カンフー・アクションを織り込んだ『カンフー・パンダ』(08)だ。古代中国を舞台に、熱意は人一倍のカンフーおたくだが、小心者で実戦経験なしの太っちょパンダのポーが“龍の戦士”に任命されてしまい、シーフー老師のもとで修業する物語。これが全世界興収6.3億ドルを超えるメガ・ヒットとなる。中国国内では「カンフーの本場たる中国ではなぜこういう映画がつくられないのか」といった議論まで巻き起こる事態となった。
2005
『マダガスカル』、アードマン初の長編 『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』公開
2006
米パラマウント社との流通契約を締結。『森のリトル・ギャング』『マウス・タウン ロディとリタの大冒険』公開
2008
『シュレック3』『ビー・ムービー』公開。09年以降の全作品を3Dで公開すると発表。『カンフー・パンダ』『マダガスカル2』公開。『マダガスカル』の人気キャラ、ペンギンズのスピンオフがスタート
2009
『モンスターVSエイリアン』公開
(その3へつづく)
文/横森文【DVD&動画配信でーた】