柳楽優弥が“世界的アーティスト”北斎役に挑む『HOKUSAI』撮影現場に潜入取材!<写真18点>

コラム

柳楽優弥が“世界的アーティスト”北斎役に挑む『HOKUSAI』撮影現場に潜入取材!<写真18点>

北斎の生涯を描くキーワードは“波”

様々な流派で絵を学び、生涯で3万点以上もの作品を描き残したという北斎。“赤富士”や「北斎漫画」といった世界的代表作がありながらも、本作でフィーチャーしたのは北斎の描いた“波”だと中山プロデューサーは語る。「企画・脚本の河原さんから『江島春望』、『冨嶽三十六景』の一つ『神奈川沖浪裏』と、『男浪』『女浪』の2連作からなる『怒涛図』の3つの作品で北斎の人生を描きたいと相談を受けました。歳を重ねる毎に迫力を増す“波”を3枚並べてみた時に『きっと当時、水を形にするという概念は北斎が初めてだったのではないか。そこで北斎は何を見てきて、彼には何が見えていたのか?』そんな視点から北斎を描けないかと考えました」。

本編のクライマックスに登場する『怒涛図』の場面では、照明の佐藤宗史氏の提案により、上から水槽を吊るしそこに光を当て「波の中で描いている感覚」を表現したという。ゆらめく光と筆の動き、鮮やかなブルーが“波”を形づくっていく様は圧巻で、力強い印象を残すシーンに仕上がっている。

晩年まで波を追求し描き続けた北斎
晩年まで波を追求し描き続けた北斎[c]2020 HOKUSAI MOVIE
当時の技法にならい、映画のために多数の浮世絵が用意された
当時の技法にならい、映画のために多数の浮世絵が用意された[c]2020 HOKUSAI MOVIE

フィーチャーされる3作品のほかにも、劇中では100枚以上の浮世絵が登場する。「本物をご提供していただけるという話もあったのですが、やはり年代が経っていて褪せてしまい当時の色とは違う状態でした。今回はアダチ版画研究所さんにご協力いただき、コピーではなく本作のために新たに浮世絵を版で刷ってもらい、特に北斎や歌麿、写楽らの作品は昔の技法に沿ってつくられたものを映しています」(中山プロデューサー)。

“新しい時代劇”を象徴するような美術セット

そんな本作が目指すのは“新しい時代劇”とあり、美術セットでは、従来の時代劇にはない鮮やかな色づかいが用いられている。「時代考証とは合っていない部分もありますが、きっと江戸時代はもっと派手であったろうという思いでつくっています」と話す中山プロデューサーらのオファーで、本作の美術監督を務めたのは、『累-かさね-』、『OVER DRIVE』(共に18)などの相馬直樹氏だ。

玉木宏が、美人画の大家・喜多川歌麿に扮する
玉木宏が、美人画の大家・喜多川歌麿に扮する[c]2020 HOKUSAI MOVIE
天井まで描かれた孔雀の絵が見事な、歌麿の部屋のセット
天井まで描かれた孔雀の絵が見事な、歌麿の部屋のセット

この日公開された美乃屋の宴会場と、喜多川歌麿が住まう座敷は「和のテイストをあえて意識せず、波を模したスウェーデンの外壁や、プラハにあったピンクの内装のカフェを参考にしています」という相馬氏。歌麿の部屋は、内壁が全面ピンクで塗られ、カラフルな孔雀の絵がダイナミックに天井まで伸びており、この内装で美人画の才能に長けていた歌麿の“色気”を表現しているのだそう。

“新しい時代劇”の風は、見たこともないようなカメラアングルや動きのある画面からも感じることができる。「相馬氏が手掛けたデザインをいかに撮りきるか」をテーマにしていたという橋本監督と撮影チームは、ぐるりとカメラを180度回転させて、その美しい孔雀の間全体をスクリーンに映しだす。

一方、数えきれないほどの引っ越しをしていたと言われる北斎の部屋も「彼の心情を表したものにしたい」(相馬氏)ということで、青年期は芽が出ずもがいている苦悩を、老年期は様々なものをそぎ落としたような心情を表現したセットを制作。有名になり始めた頃の北斎が住む長屋の部屋から部屋を俯瞰で捉えた壮観なショットは、本編の見どころの一つと言えるだろう。「冨嶽三十六景」でも有名な“北斎ブルー”の色づかいは、晩年の家で登場する。どのように扱われているのかは、ぜひ劇場で確認してほしい。

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