柳楽優弥が“世界的アーティスト”北斎役に挑む『HOKUSAI』撮影現場に潜入取材!<写真18点>
「阿部さんは目指したい俳優」、「柳楽くんは吸収力が高い」と互いの印象を明かす
「阿部(寛)さんから、志津屋のパンの差し入れをいただきましたー!」という掛け声と拍手が鳴る中、撮影は昼休憩へ。その合間に、青年期の北斎を演じる柳楽と、蔦屋重三郎役の阿部にも話を伺った。
「北斎の若い頃の史料ってそこまで残っていないので、どんな人物だったのか最初は迷いました。でも、監督と『今回の作品なりの北斎像をつくっていきましょう』と話していろいろ試しています。撮影前には、絵の練習もけっこうしました」という柳楽と、「侍役は何度も演じているけど、町人役というのは非常に新鮮でした。“はんなり歩く”というのが得意じゃないと自分でもわかっていたので、粋な風情を出すために日本舞踊を少し習いました」と語る阿部。北斎を題材にした作品で、青年期の北斎や蔦屋重三郎との関係にスポットが当たるものは珍しく、2人共に撮影前に役へ入る準備を済ませたうえで、現場で試行錯誤を繰り返しているのだそう。
今回、意外にも初共演となる2人。阿部が柳楽の印象を「“目”がいいですよね。本番になると急にスイッチが入って、スポンジみたいに吸収して柔軟に対応できる。本当に芝居が好きなんだな、と感じますね。柳楽くんの『誰も知らない』(04)を観て、しばらくしてから僕も是枝(裕和)監督の作品に出させてもらっていたので、そういう意味では少しシンパシーを感じます(笑)」と語ると、柳楽もうれしそうに「(阿部主演の)『海よりもまだ深く』(16)が大好きなんですよ。表情がアル・パチーノに似ているんですよね!阿部さんは、『ここどうしたらいいですかね?』といろいろ相談できる、目指したい俳優さんです」と自然体な姿をさらけ出してくれた。
是枝作品といえば、昨年『万引き家族』(18)で脚光を浴びた事務所の後輩・城桧吏も出演している。「僕に『似ている』と言われることが多くて、撮影したシーンの映像を見せてもらったら、『言おうとしていることはわかるな』と(笑)。現場では会えていないので、いろいろ話してみたい。魅力的な雰囲気の子だと思います」と柳楽。一方で、老年期を演じる田中泯に対しては「泯さん演じる晩年の時代が、世間一般によく知られている北斎像なのかなと思います。まだ老年期は撮影前ですけど、泯さんが北斎を演じている画がすぐイメージできました。なので、そこに引っ張られず僕は青年期をどう演じられるかに日々向き合っています」と、あえて意識はせず演じているそうだ。
「北斎は日本人で唯一、(米LIFE誌で)1000年で偉大な業績を残した100人のうちの1人に選ばれたというすごい存在。そんな人を演じさせてもらっていて、本当に光栄です」(柳楽)、「いま北斎ブームが再来しているので、そういった作品に携われることがうれしい」(阿部)と、日本が誇る世界的アーティスト・葛飾北斎を描いた作品に参加している喜びと緊張感の両方を抱えながら、撮影に臨んでいる様子の2人だった。
2020年は北斎の生誕260周年という記念イヤーでもあり、世界からも注目を集めるであろう本作。“新しい時代劇”を目指すスタッフと役者たちの熱量が注ぎ込まれた、『HOKUSAI』の公開を楽しみに待ちたい。
取材・文/トライワークス