【連載】「尾崎由香のぴゅあっとムービー」最終回 今月の映画:『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
映画好きで知られる声優・尾崎由香が、鑑賞した映画や自身のあれこれについて語る「尾崎由香のぴゅあっとムービー」(「月刊シネコンウォーカー」&「月刊イオンエンターテイメントマガジン」連載)。最終回となる今月は、『Mommy / マミー』『たかが世界の終わり』若き天才監督グザヴィエ・ドランの『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』(3月13日公開)を取り上げる。
2006年のニューヨーク。大ヒットTVシリーズへの出演で一躍スターとなった俳優のジョン・F・ドノヴァンが、29歳の若さでこの世を去った。自殺か事故か、人気絶頂の彼の死は謎に包まれていた。その10年後、新進俳優のルパートは、自身がまだ11歳の少年だった頃にジョン・F・ドノヴァンと交わしていた100通以上の秘密の手紙を一冊の本として出版。すべての真相を取材で語ろうとするが…。
グザヴィエ・ドラン監督といえば、これまでの作品が軒並みカンヌやヴェネチアといった国際映画祭で高く評価されている俊英。今回、「ゲーム・オブ・スローンズ」のキット・ハリントンをはじめ、ナタリー・ポートマン、ジェイコブ・トレンブレイ、スーザン・サランドンといったハリウッドの豪華キャストとタッグを組み、初めての英語作品を完成させた。実は当時8歳だったドラン少年が“憧れのスター”だったレオナルド・ディカプリオに宛てて手紙を書いたというエピソードが物語のベースになっているという。そんな、ドランの自伝的とも言える今品を、彼女はどのように観たのか?
想いの込められた手紙が好き
大学は映画学科に通っていたんですが、「好きな監督はグザヴィエ・ドランです」って人が結構多くて、ドラン作品が流行ってたんです。『Mommy/マミー』も映画館に観に行ったのを覚えています。音楽の使い方とか映像とか、おしゃれなんですよね。
彼が描く物語は家族、それもお母さんのことがテーマになっている作品が多い印象ですが、今回もしっかり描かれていて、重くてせつない話の中に、“愛”を感じました。
今回は初めての英語作品ということもあって、過去作より一層のめり込んで観られた気がします。それにキャストも豪華! 主演のキット・ハリントンはドラマの「ゲーム・オブ・スローンズ」とはまた違った繊細な演技がとってもステキでしたし、お母さん役のナタリー・ポートマンは、捜していた息子と巡り合うシーンが印象的でグッときましたね。
あと、劇中で「スタイルとは自分自身を知ること」(注:米作家ゴア・ヴィダルの名言)という言葉が何度か出てくるんですが、自分自身を見つめ直すきっかけにもなるいい言葉だなって、思わずメモしちゃいました。映画に出てくるいいセリフや言葉はついメモしたくなるんですよ(笑)。
この映画では、若手スターと少年の“秘密の文通”を軸に物語が展開しますが、個人的に手紙ってすごく好きなんです。書くのも好きだし、読むのも好き。直接伝えられないことも手紙なら書けるから、一番真実の声に近い気がするんです。
今回の映画もそうですけど、手紙には想いがちゃんと込められているから、まっすぐに伝わると思うんですよね。手紙ってやっぱりいいなって。だからなのか手紙が捨てられなくて、全部缶に入れて保管しているんです…(笑)。
おざきゆか◎1993年生まれ、東京都出身。15年より声優活動を開始し、17年にテレビアニメ「けものフレンズ」のサーバル役に抜擢され注目を集める。18年には「LET’S GO JUMP☆」でソロデビューを果たし、19年8月に1stソロアルバム「MIXED」をリリースするなどアーティストとしても活躍中。5/13(水)にはNew Mini Albumのリリースが決定。Twitter/@ozaki_yuka515 Instagram/ozapure15
取材・文/編集部