「原発是非論の映画を作る気はなかった」【『Fukushima 50』若松節朗 ×「いちえふ」竜田一人 対談】

インタビュー

「原発是非論の映画を作る気はなかった」【『Fukushima 50』若松節朗 ×「いちえふ」竜田一人 対談】

話題の映画『Fukushima 50』、深層に迫る特別対談!
話題の映画『Fukushima 50』、深層に迫る特別対談![c]2020『Fukushima 50』製作委員会

東日本大震災時の福島第一原発事故を描く映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)が国内興行ランキングで2週連続1位となり、その後もランキング上位をキープするなど話題を呼んでいる。Yahoo!映画レビューでは、3月28日時点で平均4.25点、Mitaiユーザーレビューでも平均4.2点と高評価を得つつも、SNSなどでは賛否両方の声も上がっている。本作を手掛けた若松節朗監督は、その評価をどう受け止めているのか。今回、若松監督と、福島第一原発で作業員として働いた体験談を綴った漫画「いちえふ ~福島第一原子力発電所案内記~」の作者、竜田一人を招き、福島第一原発事故をエンタテインメントとして描くことの意義について、前後編でたっぷりと語ってもらった。今回はその前編をお届けする。

【写真を見る】『Fukushima 50』監督の若松節朗と「いちえふ」の漫画家、竜田一人が白熱対談!
【写真を見る】『Fukushima 50』監督の若松節朗と「いちえふ」の漫画家、竜田一人が白熱対談!撮影/山崎伸子

『Fukushima 50』は、福島第一原子力発電所(通称:イチエフ)で起きた未曾有の事故で、死を覚悟して現場に残った作業員たちの真実に迫る意欲作となっている。主演の佐藤浩市をはじめ、渡辺謙、吉岡秀隆、緒形直人、火野正平、平田満、萩原聖人、佐野史郎、安田成美といった演技派俳優たちも、それぞれの思いを胸に本作に参戦した。

第34回MANGA OPENの大賞を受賞した「いちえふ ~福島第一原子力発電所案内記~」は、東日本大震災を機に会社を辞めた竜田が、イチエフで作業員として従事した経験を描いた、迫真のルポルタージュ漫画となっている。

「建屋の再現度がすごいなと思いました」(竜田)

ドス・カラスの覆面で登場した「いちえふ」の漫画家、竜田一人
ドス・カラスの覆面で登場した「いちえふ」の漫画家、竜田一人撮影/山崎伸子

――まずは竜田さんから、映画を観た感想から聞かせてください。

竜田「すごい力作だと思いました。試写室で観たのですが、音響効果もすばらしく、迫力のある作品だと思いました」

――若松監督も、竜田さんの「いちえふ」を読まれていたそうですね。

若松「映画を撮影するにあたり、文字資料ばかりではなかなかイメージができなかったのですが、竜田さんの漫画はすごくわかりやすかったです。原発事故後の話ですが、防護服の着方や建物の見取り図なども入っていましたし、小説を読んでいるみたいに情報量がすごく多いのでので、参考にさせてもらいました」

竜田「わかりやすいように描くことを心がけていました。ササッと読めないのが弱点だけど、読み込んでくれたらおもしろいと思います。装備を脱着する手順なども詳しく描いています」

若松「原発に入る際は、着衣を全部着替えなければいけないんです。靴下もなぜ2枚も履かなきゃいけないの?と思ったりもしました」

――「いちえふ」で、作業員の方が手袋を脱いだ時、汗が流れる音がするという描写がありましたが、やはり相当暑いのですか?

竜田「暑いです。あれは本当です」

若松「我々の撮影は冬場だったから良かったけど、耐火服を着ると本当に汗が出るんです。いっぱい着込むから夏は地獄ですね。また、事故当時は空焚きしている状態の建屋に行かなければいけなかったので、相当厳しい室温たったと思います」

――イチエフで働いていた竜田さんから観て、『Fukushima 50』のセットはいかがでしたか?

竜田「建屋の再現度がすごいなと思いました。私が入ったことがあるのは2号機と3号機の原子炉建屋で、見学で中央制御室も行ったことがありますが、あまりのリアルさに驚きました」

若松「ありがとうございます。僕たちは、イチエフは外観しか見てませんが、浜岡原子力発電所にはおじゃましました。普通は行ったことがない場所なので、圧倒されましたね」

決死の作業に当たる作業員たち
決死の作業に当たる作業員たち[c]2020『Fukushima 50』製作委員会

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