「彼らはヒーローになれないジレンマを背負っている」【『Fukushima 50』若松節朗 ×「いちえふ」竜田一人 対談】
「“あそこはまだ危険なんだ”というイメージを払拭していきたい」(竜田)
――終盤、佐藤さん演じる伊崎が、帰還困難区域となっている富岡町で満開の桜を観るシーンが非常に印象的でした。「原発は明るい未来のエネルギー」という看板もカメラがしっかりと捉えています。
若松「実は、シナリオでは中盤に描かれていたんですが、あのシーンは一番最後に出したいと思ったので、僕の意地でそうしました」
竜田「でも…車が走っているルートが実際とは違いますよね?現地を知っているとワープしているのがわかっちゃうので(苦笑)」
若松「それはごめんなさい!でも、映画的には伊崎があのルートを通ってきたことに意味があったので…」
竜田「重箱の隅をつつくようで申し訳ありません。もちろん、演出的に考えるとあれしかなかったとは思いました。さらにもう1つ…いいですか。映画の通り、あの時点では桜を見ている見物客がいないんですが、その後、あの桜並木のエリアが部分的に解除されていって、いまはお花見ができるようになっています。双葉町の一部や大熊町の一部が避難解除になり、夜ノ森駅も解除になって、3月14日は常磐線が通りました」
若松「そうでしたか!とはいえ、全部は解除になっていないわけですよね」
竜田「そうなんです。まだ全部ではないけど、映画で描かれているよりもさらに長い範囲で花見ができるようになったので、どんどん伝えていかないとダメだなと。そうじゃないと、あそこはまだ危険なんだというイメージだけが残ってしまう。僕が漫画のなかで描いた楢葉のコスモス畑の場所にも商業施設ができました。もう1回田んぼになればいいなと思っていたんですが、いまは新しい病院や、復興住宅、スーパーなど、いろんなものができてきました。長らく積まれていた汚染土もどんどん片付けられています」
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