「彼らはヒーローになれないジレンマを背負っている」【『Fukushima 50』若松節朗 ×「いちえふ」竜田一人 対談】

インタビュー

「彼らはヒーローになれないジレンマを背負っている」【『Fukushima 50』若松節朗 ×「いちえふ」竜田一人 対談】

「風評被害を防ぐための漫画を、ぜひ描いてほしい」(若松監督)

【写真を見る】東日本大震災のすさまじい爪痕に息を呑む
【写真を見る】東日本大震災のすさまじい爪痕に息を呑む[c]2020『Fukushima 50』製作委員会

――地元では、少しずつでも復興が進んでいるということですね。

若松「そういう情報を得られるだけでも印象がずいぶん変わりますね。原発のタンクの水を海に流すかどうかという問題はどうなっているんですか?」

竜田「実は大前提として、いま溜まっている水全部が一度に流れたとしても、環境にも生物にも影響はないという報告があがってきています。ではなぜ漁師さんたちが反対しているかというと、タンクの水を流すと風評被害が起きると心配しているからです。ただ一方、どんどん溜め続けていくことによっても、『まだ、あんなに危険なものがいっぱいある』ということ自体が風評になっていくので、どうにかしなければなりません」

若松「なぜ、国が現状をきちんと説明できないんだろう?」

竜田「最終的には、責任ある立場の人間が石を投げられる覚悟で『私が責任を取るからやりましょう』と言うしかないでしょう。東電も漁師さんたちも、『流してください』とは言えないから。誰かが泥をかぶるしかないんです」

――かなりハードルが高そうですね。

竜田「風評被害が起こるというけど、実はいままでも水の放出は実施しているんですが、そこまで騒ぎにはならなかった。もちろんタンクの水を流すとなると、多少は騒ぎになると思いますが、計画的に情報公開をしながらやっていけば、風評被害を防ぐことも可能なはずです。それは、ずっとこの事象を追ってきた人ならわかることだと思います」

若松「それを漫画で描くことはできませんか?」

竜田「なんとか漫画にしたいんですが、この話を描いてもエンタテインメントにならないんです」

若松「もちろん、全部を真面目に描くのではなく、途中にあなたの歌なども入れたりして」

――竜田さん、被災地で弾き語りもされていますし、漫画にも登場していますよね。

若松「これは誰でもできることではないので。竜田さんの漫画はわかりやすいので、ぜひ描いてほしいです。これは竜田さんに与えられた使命ですよ!」

竜田「そう言われるとつらいですが、頑張ります(苦笑)」

固い握手を交わした、若松節朗と竜田一人
固い握手を交わした、若松節朗と竜田一人撮影/山崎伸子

取材・文/山崎 伸子


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