広瀬すずと吉沢亮、「なつぞら」と『一度死んでみた』で連続共演の信頼感とは?
「再共演の相手に、自分の成長を感じてもらえたとしたら、素直にうれしいです」(広瀬)
劇中で2人との共演シーンが多かったのが、野畑計役の堤真一だ。広瀬は、堤のコミカルな演技を「すごかったです」と絶賛する。
「堤さんは、急なハプニングが起きたとしても、すべてお芝居で拾ってくれるという安心感がありました。声のトーン1つにしてもここだというところを全部狙ってくるので、思わず笑っちゃう。リリー(・フランキー)さんとのシーンも、小さい声でしゃべっているので、日常みたいな感覚が出ていておもしろかったです」。
リリーが演じたのは、計と交流するあの世への案内人、火野役で、七瀬にはその姿が見えても、松岡には見えないのだ。吉沢も堤について「安定感がすごいので、出てきただけで笑えます。堤さんならなにをどんなふうに言っても正解な気がしちゃう」と感心しきりだ。「リリーさんと堤さんとの共演シーンでは、2人の声が聞こえないという設定だから、松岡としては本来無視をしなきゃいけないのに、おもしろすぎて笑っちゃう。そこを堪えるのがけっこう大変でした」。
広瀬は、今回初めてコメディを演じてみて、その奥深さも実感したそうだ。「こうやったらきっとおもしろいと思っても、笑いを求めすぎるとできなくなるし、私はゲラだから、相手のリアクションに対して『そう来たか!』とすぐに笑っちゃう。また、コメディ特有のリズム感も必要だから、頭が良くないとできないのかなとも思いました」。
吉沢も「演じていて楽しいけど、実は技術的なものを一番求められるのがコメディ」だと捉えている。「感情だけでどうこうできるわけでもないし、かといって笑わせようとしてやるとスベってしまうので、そのへんのバランスが難しい。どうしてもふざけたくなってしまいますが、キャラクターとしては真面目にやっているのにそれがおもしろいというのが一番の理想です」。
いずれにしても、映画を観たかぎり、2人は要所要所できちんと笑いを取っているし、コメディを全面に押しだした本作で、親子愛のドラマやラブストーリーのパートもきちんと担っている。
短いスパンでがっつりと再共演した2人だが、お互いの成長などは、感じ合っているのだろうか。広瀬は「どうなんだろう」と少し照れながら考え込む。
「例えば、リリーさんは、『海街diary』から5作くらい共演作が続きましたが、また『なつぞら』で共演した時、すごく恥ずかしかったです。もしも、自分に対してなにか成長みたいなものを感じてもらえているとしたら、素直にうれしいですが、それを伝え合うシチュエーションがないので、あまり考えたことがないです。吉沢くんは、1年くらいずっと現場で一緒だったので、いるのがだんだん当たり前になっていきました」。
吉沢も「やっぱり何回も共演している人とまた一緒にやるのは恥ずかしいです」と微笑む。「その人との関係性にもよると思います。例えば、僕もプライベートでいるほうが長い共演者もいますが、そういう人ともう1回お芝居をするとなると、最初はなんとなく笑っちゃうこともあります。ただ、やっぱり再度共演する方からは、『以前よりも成長してるな』と思われたらうれしいですし、そう思われたいです」。広瀬も「私もそう思われたいです」と大きくうなずき、2人で笑い合った。
広瀬は、『三度目の殺人』(17)で第41回日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞をしているが、吉沢も今年、『キングダム』(19)で第43回日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞を受賞した。今後も高みを目指していく2人だからこそ、またの再共演で、きっとお互いの成長を感じ合うに違いない。
取材・文/山崎 伸子