ハーレイ・クインを演じプロデューサーも務めるマーゴット・ロビー「現実を忘れて楽しい時間を過ごして」
同じくマーゴットのプロデューサーとしての視点が活かされているのが、ハーレイ・クインの衣装。『スーサイド・スクワッド』と比べ、本作でのハーレイのコスチュームはキラキラ度は増し、よりポップになっている。この点については「女性視点を活かすという意識はなかったけれど、自然のなり行きだった」と言う。
「女性も男性も関係なく、たくさんのコスチューム・デザイナーと話したなかで、エリン・ベナッチが出してくれたコスチュームのアイデアや参考として挙げてくれた映画がすべて私の好み通りで、彼女にお願いすることにしたの。キャシー監督が作るゴッサム・シティは、ほかのDC映画よりも身近に感じられるような街づくりになっていたので、コスチュームからもポップな色彩やデザインが含まれる80年代のニューヨークの雰囲気を感じてほしかった。衣装合わせの時も、どんな衣装をクールだと思うか、クールに見えるか、そしてなにより戦いやすいかということを念頭に決めていったわ。結果的に女性が多い制作チームだったから、女性視点で、いかにクールでいかにセクシーかというところに落ち着いているかもしれない」
かつて、ジョーカーと交際していたハーレイ・クインが属するのは、DCエクステンデット・ユニバース。昨年の映画界では『ジョーカー』(19)が大ヒットし、ホアキン・フェニックスはジョーカー役で第92回アカデミー賞主演男優賞を受賞、トッド・フィリップスが描いた至極ダークな世界観が話題となった。マーゴットは、『ジョーカー』と同じDCエクステンデット・ユニバースにおける本作の立ち位置をどう捉えているのだろうか?
「DCとマーベルはまったく違う戦略で作品を作っているの。マーベルの映画作品は独自の定型を設けて、そのコンセプト形成が成功に繋がっている。DCの映画作品は、コミックスのように作り手たちのそれぞれの観点で自由に創作されている。作者とイラストレーターが独自の世界観を持った1冊を作るように、監督が独自の1本を作る。それぞれのビジョンには異なる美意識とトーンがあって、キャラクターや彼らの背景、作品内で起こる出来事も併せて創作できる。私はこのDCの考え方をとても気に入っていて、大きなDCのユニバースの中にはトッド・フィリップス監督が創るゴッサム・シティとジョーカーのビジョンもあれば、キャシー・ヤン監督バージョンのゴッサム・シティとハーレイ・クインも存在するし、ジェームズ・ガン監督バージョンの『スーサイド・スクワッド』もそれと共存する。それぞれが作るコンセプトに沿った世界が存在していて、それはコミックスを読んだ時の感覚に近いと思う。最新作とハーレイ・クインが初登場した回のコミックスは異なるビジョンで描かれているし、トーンも異なる。でも、ハーレイというキャラクターのあり方は共通するものを持っている。様々なクリエイターの手に委ねられ、いろいろな状況や側面を見せられても、ハーレイの芯の部分は変わらない。そのほうが、毎回異なるハーレイを楽しめるでしょ?」
そう語るマーゴットはすでに次の作品に動きだしていて、ジェームズ・ガン監督による『スーサイド・スクワッド』最新作も来年公開予定だ。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のクエンティン・タランティーノ監督、『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』(13)のマーティン・スコセッシ監督など、稀代の名監督たちが女優マーゴット・ロビーの異なる顔をスクリーンに映しだしてきたように、マーゴットが演じるハーレイ・クインも、今後異なるクリエイターの手に委ねられ、異なる姿を見せてくれるだろう。
取材・文/平井伊都子