サーチライト・ピクチャーズが巣ごもり時代のおすすめリスト「#WatchReadListen」を公開中
アメリカでは新型コロナウイルスにかかる外出禁止令が最初に出されてから3週間が経過した。レストラン、カフェはテイクアウトのみ、映画館も閉鎖され人々の生活は激変し、どのように家で過ごす時間を快適にするかに関心が集まっている。
多くの人気作品やアカデミー賞受賞作品を輩出してきた映画スタジオ、サーチライト・ピクチャーズは先週から“サーチライトな人々”による、巣ごもり時代のおすすめ映画・音楽・本のリスト(#WatchReadListen)を公開している。
現地時間3月27日にアップされたウェス・アンダーソン監督が手書きで紹介するリストには、「Watch(観る)」にタマラ・ジェンキンス監督の『Fカップの憂うつ』(98)、リチャード・リンクレイター監督の『ウェイキング・ライフ』(01)、リチャード・シェパード監督の『ドム・ヘミングウェイ』(13)、そしてマーティン・マクドナー監督の『スリー・ビルボード』(17)が挙げられている。『ドム・ヘミングウェイ』に関して、「ジュード・ロウがとてもとても素晴らしい」とコメントを寄せられている。
これら3本は全てサーチライト・ピクチャーズが北米公開した作品だ。「Read(読む)」には、「見知らぬ乗客」「太陽がいっぱい」で知られるミステリー作家パトリシア・ハイスミスの作品を挙げ、「いま、ベッド脇のナイトスタンドにハイスミスの本が“積ん読”されているんだ」と付記する。「Listen(聴く)」には「ルイ・アームストロングの楽曲をキッチンでリピートしているよ」と書いている。今年7月に最新作『The French Dispatch』の公開を控えていたウェス・アンダーソン監督だが、新作の北米公開は10月16日に延期されている。
『ジョジョ・ラビット』(19)で主人公ジョジョの友人ヨーキーを演じたアーチー・イェーツは、「観る」に自身の出演作、タイカ・ワイティティ監督の『ジョジョ・ラビット』を挙げ、「喜劇と悲劇が結婚して生まれた子どものような映画。そして、すごい役者が出てるんだよ!」とコメント。「読む」には映画『ヒックとドラゴン』(10)の原作でイギリスの児童文学作家クレシッダ・コーウェルの作品を。「聴く」はエド・シーラン。「なぜなら、どんな好みの人にも合う1曲があるから」としている。
『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)で第90回アカデミー賞作品賞及び監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロのチョイスは、「観る」が同郷の盟友アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)。「ゴージャスで独創的、活力に満ちているだけでなく映画的快楽がある。演出、動き、音響と心情、リズミカルな流れ、完璧な比喩に帰結する、完璧な楽曲のようだ」と絶賛する。「読む」にはウェールズの民間伝承学者のエドワード・シドニー・ハートランドの「The Science of Fairy Tales(原題、日本語訳未出版)」を挙げている。
「断っておくと、この本は古典で現代の常識からすると時代遅れに見えるかもしれないが、果てしない魅力を持ち、そしてあまり知られていない。この本は『パンズ・ラビリンス』(06)を作った際の活力源で、おとぎ話や通過儀礼に共通して流れるモチーフを解読するために役立った」と説明する。「聴く」はピンク・フロイドの「狂気」(73)。「このアルバムはわたしにとって最高の“ビジュアル・アルバム”だ。音像は(サウンド・エンジニアのアラン・パーソンズとの最高のコラボレーションで)常にイメージを掻き立てる。既存の技術の限界を超えて作られ、いきいきとして情熱と痛みに満ちている。没入感と高揚感がある」と記入している。
家にこもっている際に観たい・読みたい・聴きたい至極個人的なリストにはそれぞれのクリエイターやキャストの人となりが見られ、あたたかい気持ちにさせてくれる。特に単身者が多い都市部では、外出禁止令によって他者とのコミュニケーション手段が絶たれ、孤独感に苛まれる人々を心配する声も高まっている。
オンラインチャットソフトのZoomやフェイスタイムなどを使った“バーチャル飲み会”が開かれたり、インスタグラムのライブなどで直接ファンと会話するセレブやクリエイターも現れている。サーチライト・ピクチャーズのこの試みは、オンラインながらも発信側と受け手との距離感を近づける、すばらしいプロジェクトだ。
なお、Movie Walker編集部もこの企画趣旨に賛同し、日本版をスタートするべく準備中だ。
文/平井伊都子