『The Lady』ミシェル・ヨー「パワフルで素晴らしい人を演じるチャンスをパスなんてできなかった」

インタビュー

『The Lady』ミシェル・ヨー「パワフルで素晴らしい人を演じるチャンスをパスなんてできなかった」

現在公開中の『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』でビルマ民主化運動のリーダー、1991年にアジア人女性初のノーベル平和賞に輝いたアウンサンスーチーを演じているミシェル・ヨーのインタビューが届いた。レベッカ・フレインの脚本にほれ込み、リュック・ベッソン監督に企画を持ち込んだミシェル・ヨーの本作での本人そっくりとも言われる容姿や話し方など、そのなりきりぶりはまさに必見だ。

――スーチー女史と会った時のことを教えてください

「初めてスーチー女史に会った時は、私たちがまだ撮影している時だったの。バンコクでの最後の週だったわ。『私たちは本当にすぐ隣にいるのよ』って言って、彼女に会いに行けるかトライすべきとなったの。私以外は全員ビザが却下されたけど、私は許されたから行くことにしたの。みんなは私のことを心配していたわ。でも私はそれをするのが正しいことだと感じて、スーチー女史に会ったの。彼女と信じられない2日間を過ごしたわ。2ヶ月前、リュックとヴィルジニーもビザが下りて、それでまた会いにいくことを決めたの。できればみんながスーチー女史に会えればと思ったわ。でも今回私が行った時、ミャンマー政府はとても丁寧だったけど、実に堅固な感じだったの。彼らは私をそのまま国外までエスコートしたわ。彼らは何度も『ごめんなさい』って言ったけど、私は『謝らなくて良いからあなたの国に入れてください』って言ったの。でも彼らの答えは『ノー』だった。彼らがいかに国として閉ざされているかをはっきりと、ものすごい早さでそのことを示していたと思う。とても悲しくてがっかりしたわ。その時『私はあなたたちが入れてくれるまで帰らない。あなたたちには私の入国を拒否する権利はない』と言って、大騒ぎすべきかどうか考えたけど、そのことは誰にとっても良いことにならないと思ったの。そのことはまた彼らがいかに理不尽で、馬鹿げているかを示していたわね。実際、彼らが私の入国を許さなかったとメディアに情報を流したの。でも私はまた必ず戻るわ」

――スーチー氏はこの映画のことをどう思っているのですか?とてもパーソナルな部分を描いていますが、彼女は心配していましたか?

「スーチー女史に会った時、私たちはタイでの撮影をほとんど終えていたの。面白かったのは、私が彼女の家に近づいた時、不気味な感じがしたの。なぜならそのゲートをくぐった時、『私は昨日ここにいた』って感じたから。私たちはそれと全く同じセットを作っていたの。私は階段を上がりながら、『何てこと。私の部屋じゃないわ。いったいどうなってるの?』って感じだった。そして彼女を見た時、自分がとてもよく知っていると思っている、自分がこの4年間、一緒に過ごした人が目の前に突然現れたの。そして彼女は手を広げて、私を強く抱き締めてくれたわ。そして彼女がとても痩せていると感じた。でも一瞬たりとも、この女性はとても壊れそうで、今にも倒れそうだとは感じなかった。そこには力とオーラが感じられたの。彼女は座ったわ。彼女はとてもスマートだった。素晴らしいユーモアのセンスの持ち主で、すぐに相手をリラックスさせてくれるの。彼女はよく笑うし。彼女に対して私が予想していたことと違ったことは、彼女がとても素早く動くということね。彼女にはものすごいエネルギーがあって、禅的な感じがあるの。彼女は部屋の中を宙に浮いた感じで進むの(笑)。彼女をつかまえて座らせることはできないわ。でも私たちが彼女のエネルギーを感じたり、一緒にいることでいろんなこと理解することが、彼女には必要なの。それが分かるの。だから実に素晴らしかった。私は彼女をしばらく見つめ、彼女は私の腕をつかんでいたわ。私たちは映画のことは全く話さなかった。私たちの両方で、そういったことは意識していたことだったの。なぜなら私たちは、万が一にも彼女を危険に晒すことはしたくなかったから。彼らが、『何でそういった情報を渡し、軍部についてあんな悪い言い方をしたんだ』ってならないようにしたの。彼女が今までにやった全てのインタビューを見ると、彼女はいつも彼らにとてもよくしてもらっていると語っているわ。自宅軟禁されている間ずっと。だから信じられない立場にいるの。私が『私たちがこうやってここに一緒に座っていたことは、いつかみんなに知られるでしょうね』と言ったら、彼女は『これは家族の訪問よ』って言ったわ。私は自分の弟と一緒で、彼女はキム(スーチー女史の次男)と一緒だったけど。そして彼女は『これはとてもナイスな家族の訪問なの。そういうことなのよ』って言ったわ」

――あなたは多くの映画でたくさんの素晴らしい役をこなしてきました。このキャラクターのどんな点に最も惹かれたのですか?

「レベッカの脚本をもらった時、私のエージェントに『彼らとすぐに会いたい』と言ったわ。そして飛行機に乗ってロンドンに行って、私たちは会ったの。なぜならストーリーにとても感動したから。私たちは政治的な面や、彼らが抱えている問題については知っていたけど、この信じられないラブストーリーについては知らなかった。このソウルメイト(マイケル・アリス)は、彼女の安全を守るためにあらゆることをしたの。もし誰かを愛したら、相手のことを変えようとはしないわ。彼はいつも彼女がどんな人か知っていたの。最初に彼らが結婚した時、彼女は彼にこう言ったわ。『もし自分の国が私を必要としたら、私は彼らをサポートしないといけない』ってね。そして彼は、自分が死ぬ日までそのことをやり続けたの。私たちはアジア人だから、こういった精神性については、多分より理解できると思う。彼女はイギリス人とは結婚できなかったの。なぜなら彼女はミャンマー人だからね。軍部はいつもそのことについて彼女を批判していたわ。裏切り者だって。『もし私たちの政治的リーダーだったら、なんでミャンマー人と結婚できないんだ?』ってね。でも彼女は、彼が生涯の恋人だと知っていたの。そして本当にそうだった。だからこんなにパワフルで素晴らしい人を演じるチャンスをパスすることはできなかったわ」

涙なくしては見られないという本作は、マスコミのみならず、一般の方々の評価もかなり高い。そしてミシェル・ヨーがほれ込んだ脚本が7月31日(火)に書籍化(文庫)され、販売されることも決まっている。是非この機会に劇場で本作を鑑賞すると共に、書籍も読んでみてはいかがだろうか。【Movie Walker】

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