『人生の特等席』父娘の姿に共感の声「素直に言えない男心に胸を打たれた」
クリント・イーストウッドが『グラン・トリノ』(08)以来、4年ぶりに俳優復帰した『人生の特等席』(公開中)。本作の公開に先駆けて行われた試写会上映後のアンケート調査には、20代から60代まで幅広い層が回答。満足したという人の割合が91%と高い数字になった。
名匠、名優イーストウッドはやはり日本でもその人気は高く、今回行われた試写会来場者のほとんどが、過去にイーストウッド作品に触れてきたと回答しており、それぞれが『ミリオンダラー・ベイビー』(05)や『グラン・トリノ』など、好きな作品を掲げる。そんななか、前述の満足結果を見ると、イーストウッドに唯一の弟子と認められたロバート・ロレンツ監督の手腕が高い評価を得ているようだ。暗い、重い、男臭い映画と思われがちなイーストウッド作品だが、女性の満足度が95%と、女性にも受け入れやすい作品に仕上がっているのだ。
その理由について、ロバート・ロレンツ監督は「キャラクターが現実にいそうなリアルさを持ち、彼らが感じる気持ちや置かれる状況もリアルに描いている。見た人はこの映画のキャラクターたちの中に、いくらかでも自分自身を見つけるんだ。だから、たくさんの人に感動を与えられる」と、キャラクターそれぞれに魅力があることを明かしている。今回のアンケートで、最も心惹かれたキャラクターには、男性からはイーストウッド演じるガスやジャスティン・ティンバーレイク演じるジョニーなど男性キャラクターが挙がり、女性からはガスの娘ミッキー(エイミー・アダムス)を挙げる人が半数以上に。理由として「自分と重なるから」「頑固親父を持つ娘として気持ちがわかる」など、各キャラクターの存在が共感を呼び、多くの支持を集めた。
特に女性は「頑固者の父親を持つ娘として父とだぶりました。素直に言えない男心に胸を打たれました」「不器用な父親の姿、すごくぐっときた」「家族だからこそ、大切だけど素直になれない頑固親父の葛藤が伝わってきて苦しかった」「それぞれ問題があって、親子で話せないこともあって、それもまた普通のことなんだと改めて感じました」など、親子の絆に感動や共感したという意見が多く、男性は「クリント・イーストウッドの言葉に出せない苦悩な表情全てに感動」「ガスの不器用な生き方に心惹かれた」「妻とも子供ともしっかりコミュニケーションをとり、相手を思いやれる人間にならねばと思いました」と、イーストウッドが魅せる頑固でありながら信念を曲げない不器用な生き方に、気持ちが揺さぶられたようだ。
アンケートからもわかるように、それぞれの立場から共感できるキャラクターがそろい、幅広い層から支持を得られる作品に仕上がった本作。父と娘の絆を描く普遍的なテーマだからこそ、奇をてらわず真っ直ぐに作り上げた物語は、改めて親子の絆の大切さを思い出させてくれるはずだ。【Movie Walker】