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早くもオスカーの呼び声!『マン・オブ・スティール』悪役マイケル・シャノンが殺人者に

インタビュー

早くもオスカーの呼び声!『マン・オブ・スティール』悪役マイケル・シャノンが殺人者に

『レボリューショナリー・リード 燃え尽きるまで』(08)で第81回アカデミー助演男優賞にノミネートされ、6月14日(金)に全米公開される『マン・オブ・スティール』(日本8月30日公開)では悪役ゾッド将軍に大抜擢された、今、最もホットな個性派俳優マイケル・シャノンが、実在の殺し屋に扮する新作『The Iceman』について語ってくれた。

第69回ヴェネチア国際映画祭や第37回トロント国際映画祭でも好評を博した同作は、1986年に100人以上の殺人罪で逮捕されたコントラクトキラー(マフィアとの契約で働く殺し屋)で、終身刑を受けたアイスマンことリチャード・ククリンスキの物語。家では良き家庭人だった彼は、2006年に獄中で亡くなったが、最後まで謝罪をしなかったことで知られている。

2009年当初、ククリンスキ役にはミッキー・ロークの名が挙がっていたが、企画が頓挫。最終的にマイケル・シャノンに落ち着いて製作費が集まったものの、2013年に公開されるまでには、長い道程があったという。

アリエル・ブロメン監督が、「少ない予算の中で映画を作ることは難しいけれど、一番大変だったのは、多忙なマイケルが撮影に取りかかれるのを待っていたことだ。どうしてもマイケルにこの役を演じてほしかった」と言うとおり、マイケルは当初から多忙だったことや、ククリンスキについて知識がなかったこともあり、「脇役なら出演しても良い」と話していたとか。アリエル監督の熱心な説得の末、主役に決定したものの、『マン・オブ・スティール』などの撮影が重なり、監督は一年間もマイケルのスケジュールが空くのを待っていたという。

それでも、「マイケルの出演が決まった途端、まるで磁石に引きよせられるようにキャストの出演が決まった」そうで、妻デボラ役にウィノナ・ライダー、『アベンジャーズ』(12)のクリス・エヴァンス、レイ・リオッタ、ロバート・デヴィ、デヴィッド・シュワイマー、そしてジェームズ・フランコ(本当はクリス扮するMr.フリーズィの役どころだったが、父親の死と『オズ はじまりの戦い』の撮影で断念)やスティーヴン・ドーフがカメオ出演するなど、豪華キャストが勢ぞろいしていることも話題の一つだ。

それについてマイケルは、「よく言われるんだけど、皆は僕のことなんか知らないと思っているので、すごくびっくりするんだ。ウィノナに、『ダニエルにあなたと共演するよ』って話したら、『すごく良い役者だから、僕も一緒に仕事がしたい』って言ってたわよ、って言われたんだけど、思わず、『ダニエルって(アカデミー主演男優賞を3度受賞した)あのダニエル・デイ=ルイスのこと?』って聞き返してしまったよ。僕も是非一緒に仕事がしたいと思っているし、ゲイリー・オールドマンもそうなんだ。本当にありがたいことだけどね。クリストファー・ウォーケンとは、『カンガルー・ジャック』(03)で共演しているけれど、次はもう少しまじめな作品で共演したいな」と、あくまで現実を謙虚に受け止めているようだ。

役作りについては、「彼について、全く知らなかったので、脚本を渡されてからYouTubeで彼のインタビューを見るように勧められたんだ。1992年に米HBOテレビで放映されたドキュメンタリー番組も見たんだけど、ククリンスキは、生きていくために殺し屋になって、逮捕されても『人を殺したことに後悔はない』と無表情に語る一方で、妻のデボラや子供たちの話になると、感情を抑えきれないような感じになる。この二面性にも興味を持ったし、実在の人物でありながら、彼のインタビューと、ある程度の書物以外、誰も本当の彼を知らないというところに、すごく魅了されたんだ。まるで探偵映画みたいで、すごく難しいけれど挑戦してみたいと思った」という。

冷徹な殺人を繰り返す役どころを、実生活に持ち込むことはなかったのかという問いには、「短い(30日以内)日程ながらも、一日中撮影をしていたけど、ラッキーなことに、家には1980年代のパックマンとかインベーダーゲームとかがあって、撮影から帰るとゲームをやって眠るって生活だったから、切り替えはできた。インベーダーゲームの左右の動きが好きなんだ」と笑う。

渾身の演技については、「自分が親になって、初めて感じたある種の激しい感情っていうのは、自分の人生で感じたことがないものだった。子供が生まれる前にはいくら想像してもわからなかったものなので、今回の作品にはそれが入っていると思う。ククリンスキは、家族に内緒で殺し屋をやっていたけど、家ではデボラや子供たちが彼の人生の全てだった。もちろん、歪んだ形ではあるけれど、ある意味、ロマンティックな関係だと思う。通常、演じる時は、『こうやったら変かな』とか『こうするべきではない』とかって頭で考えるんだけど、今回は演じる前に極力頭を空にして、ゼロの状態で演じるようにしたんだ。周囲の人たちとの関係で自分の演技も変わってくるので、周囲のことや、物語がどちらの方向に向かっていくかは常に気にかけているけれどね」と、独自の演技論を語ってくれた。

他の役者たちをも魅了するマイケルの演技力は、早くも第86回アカデミー主演男優賞ノミネートの呼び声も高いが(悪役を受賞されることは稀なため、受賞は厳しいが)、やはり大ブレイクは『マン・オブ・ザ・スティール』のゾッド将軍役になるだろう。

インタビュー中もうつむきがちで、とてもシャイな印象を受けたが、「スーパーマンは空を飛べて、ものすごく強いんだ。今、言えるのはそれだけ」と笑うマイケルの作品中の大変身ぶりは必見だ。【取材・文/NY在住 JUNKO】

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