鬼才ジム・ジャームッシュ監督、4年ぶりの新作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』でヴァンパイアの究極の愛を語る

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鬼才ジム・ジャームッシュ監督、4年ぶりの新作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』でヴァンパイアの究極の愛を語る

インディーズにこだわり続ける鬼才ジム・ジャームッシュ監督が4年ぶりにメガホンを取り、第66回カンヌ国際映画祭、第38回トロント国際映画祭に出品された話題作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(日米12月公開)を引っ提げ、女優のティルダ・スウィントンとともに第51回ニューヨーク映画祭に久々に登壇。究極の愛の世界について語った。

ニューヨーカーにとってはまるで神様のような存在のジャームッシュ監督が登場するとあって、メディアは3時間以上前から行列を作る盛り上がりぶり。試写が終わると満席の劇場からは拍手が沸き上がったが、ふさふさの白髪頭もまったく変わらず60歳とは思えない若さのジャームッシュ監督と、もうすぐ53歳とは思えないスレンダーで若々しいティルダがスタイリッシュなロングコートで会場に姿を現すと、さらに大きな拍手がふたりを迎えた。

同作は、人間社会の中でひっそりと暮らす吸血鬼アダムとイヴの永遠の愛の物語。破壊的な行動を嫌い、人間をゾンビと呼ぶアンダーグラウンド・ミュージシャンのアダムはデトロイト、イヴはタンジェと、別々に暮らしながら何世紀にもわたって愛し合ってきたが、久々の再会もつかの間、破天荒なイヴの妹エヴァが現れたことでふたりの運命が変わっていくという、なんとも神秘的でアーティスティックなラブストーリーだ。アダムにトム・ヒドルストン、イヴにティルダ、そして妹のエヴァにはミア・ワシコウスカ、そしてジョン・ハート、アントン・イェルチンらが脇を固める同作で、ジャームッシュ監督が新たなヴァンパイアの世界を創造した。

「この映画はヴァンパイアの映画だけど、僕にとって普通のヴァンパイア映画と違ってホラー映画ではないんだ。『ヴァンパイアは人間じゃない』っていう人もいるけれど、死から蘇ったゾンビと違って彼らはもともと人間だったわけで、ヴァンパイアになることで何世紀も長い間お互いの関係が続き、長いスパンで愛し合うというその関係は僕にとっては、ちょっと変わっているけれどとても興味があるものだよ」と語るジャームッシュ監督。確かに本作のふたりは人間から血を吸うヴァンパイアとは異なり、500年前の人間がまだピュアだったころの血を購入し、大切にワイングラスでいただく、まさにある種スノッブでこだわり派のヴァンパイアなのだ。

「何百年も続く関係って、ともすると惰性というか、続いているだけになってしまいがちだけど、そうではなくて、ふたりの関係は常にやり直し続けている。そういう話をジムとずっとしてきたの。普通の男女が惹かれ合ってベッドをともにした後のなれ合いの倦怠という関係ではなく、愛し合ってはいるけれど、たくさん話もできる友人のような間柄でもあるっていう関係ね。アダムもイヴもお互いを変えようとはせず、あるがままを受け入れて、ふたりの愛が永遠に続いていくみたいな」とティルダが語る愛は、まさにジャームッシュ監督のみならず、人々が理想にする究極の愛の形なのではないだろうか。

普段からあまり化粧っ気のないティルダは、まるで地を行くように、青白いヴァンパイアを実に見事に演じたが、ヴァンパイアを演じることは特に苦にならなかったという。「あえて言うならば、撮影が始まってから毎日がクリスマスみたいにバタバタとして落ち着かなかったことくらい。私個人にとっては、毎年ジムがこの映画を撮らないと知るときが一番辛いことだったわ。ジムとは以前からこの映画のことをずっと考えてきたし、私はこの映画に出演したかったから、ジムが映画を撮る日をひたすら待っていた。それが一番忍耐のいることだったのよ」とティルダ。

するとジャームッシュ監督が、「そうそう、一つ言っておこなくてはいけないことがある。僕がこの映画を撮りたいと思ったのは7、8年以上も前からのことなんだ。色々なバリエーションはあったけどティルダ主演で撮りたいって気持ちは、最初から変わらなかった。でも資金が集まらなかったり、やっと集まったらダメになったりと、様々なことが原因でなかなか製作に至らなくて、もうこの映画をあきらめないといけないって何度も思ったよ。『なんか悪いサインなんだろうから、もうやめて違う映画を撮ろう』って僕が言うたびにいつもティルダは、『違うわよ。これはいいサインなのよ。まだ今はその時が来ていないってだけよ』って言ってくれたんだ。ティルダはある種、劇中のイヴのように楽観的で影響力がある。彼女のおかげで僕はこの映画の製作をあきらめずにいられたんだ」と語り、同作がティルダとの愛のコラボであることを改めて強調した。【取材・文/NY在住JUNKO】

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