染谷将太、役者としての武器とは?「楽観主義者」と語る、若き名優の意外な素顔

インタビュー

染谷将太、役者としての武器とは?「楽観主義者」と語る、若き名優の意外な素顔

今、もっとも異彩を放つ若手実力派俳優といえば、染谷将太の顔を思い浮かべる人も多いはず。狂気を秘めた役からコミカルな役まで、どんな役でも彼独自の光と色をもった役柄として、鮮やかに輝くのだ。そんな染谷の実力を大いに感じさせてくれるのが、傑作コミックを実写映画化した『寄生獣』(11月29日公開)。染谷にインタビューし、偉大な原作に挑んだ覚悟。そして、若き名優の素顔に迫った。

原作は、累計発行部数1300万部を突破。アクションの中に哲学的要素を盛り込み、読者に圧倒的な迫力と衝撃を与えた伝説的コミックだ。メガホンをとるのは、『永遠の0』(13)などVFXと人間ドラマの融合に定評のある山崎貴監督。染谷は「『寄生獣』を山崎監督が撮るという噂は聞いていて。まさか自分にオファーがくるとは思っていなかった」と振り返る。厚い信頼を寄せられて、主人公・新一役に抜擢されたが、「まさか自分にお話をいただけるとは。本当にびっくりしましたね。そんな面白い企画に自分が呼んでいただけるなら、是非、参加したいと思いました」と思い切って飛び込んだ。

人間を捕食する新種の寄生生物“パラサイト”が出現。右手に“ミギー”と呼ばれるパラサイトを宿してしまった少年・新一の数奇な運命を描く物語だ。「物理的にも、映画化するにはハードルが高いだろうなと思っていた」と染谷。新一は、CGで作られるミギーとの芝居が必要となる難役だ。「やってみないとわからないことばかりでしたね。ミギーとの芝居もそこまで自分が動かすとは思っていなかったので、やってみて『これは一人二役だ』と実感して。自分が頑張らないと、せっかく阿部サダヲさんが作ってくださったミギーの魅力を壊しかねないですから」。

「ミギーがとにかくかわいくて」と、声だけでなくパフォーマンスキャプチャーでミギー役を演じた阿部に敬意を表すが、ミギーとの芝居には、「いくらでも自由にやれる可能性があって。それはすごい楽しかったですね。特に正解もないですし、ああやったらどうなるだろう、こうやったらどうなるだろうとできる可能性をいろいろと試しました」と、充実感をにじませる。

山崎監督とは、ミュージックビデオも含めると4度目のタッグとなったが、「山崎監督は素材にまどわされない方。今回はファンタジーだし、ありえないことが起きている世界だけれど、常に冷静に判断をされている」とうなずく。新一は、ミギーと混ざり合うことで大きな変化を遂げていくが、その変化についても山崎監督とじっくりと話し合った。「監督と話していたのは、新一が変わっていく中で、お客さんを置いてけぼりにしてはいけないということ。とても単純なことなんですが、それがとても難易度が高いことで。共感を得られなくなってしまうと、見ている方はそこで新一を追いかけることをやめてしまう。それでは面白くないですよね。新一に寄り添ってもらうためには、彼の根本にある怒りや悲しみを捨てないようにしようと思いました」。

アクションにも挑むなど、なんともチャレンジの多い作品となったが、「可能性を探っていく一つ一つが楽しかった」と軽やかな姿勢を見せる。さらには、「僕はいつでも、何かしら楽しみを見つける人間なので。楽観主義なんですよ」とニッコリ。2015年も『寄生獣 完結編』(4月25日公開)をはじめ、『さよなら歌舞伎町』(1月24日公開)『ストレイヤーズ・クロニクル』(6月公開)など出演作が相次ぐが、どんな作品が「やってみたい」と思うモチベーションとなるのだろう?「特に『こういう映画に出たい』というのはなくて、素敵な方々と何か素敵なことがしたいという、単純な思いですね。『こんな方がこんなことをやる』と聞いて、『おお!それならやってみたい!』とワクワクするという感じで」。

「楽観主義」という言葉も意外だったが、落ち着いた佇まいながら、映画の話をし始めると情熱があふれ出し、目をキラキラと輝かせる。「父親が映画好きで。小さな頃から、映画には絶対に携わっていきたいと思っていました。あと僕は、基本的にものづくりが好きなんです。ものづくりににもいろいろありますが、工作であったり、絵を描くことだったり、その様々な要素や楽しさが詰まっているのが映画だと思っていて。映画つくりの過程のすべてが本当に楽しいと思えるので、自分の性格に合っているんだと思います」。

熱烈な映画ファンとしての視点。どんな環境でも楽しみに変えてしまう、柔軟性と力強さ。それらを併せ持つ染谷が、多くの監督から求められるのも納得だ。役者としての武器を聞いてみると、「良い意味で、役者を始めた頃と何も変わっていないところですかね」と照れ笑い。「それが一番、大事なことだと思うので。常に、自分が自分らしくいられるようにしています」。22歳の若き名優は、しっかりと地に足をつけて役者道を歩いていた。まずは「今までの自分にとっては初めてのチャレンジとも言える作品。自分のなかで、絶対に根強く残っていくものになったと思います」と胸を張る『寄生獣』で、染谷将太の魅力を堪能してほしい。【取材・文/成田おり枝】

ヘアメイク=河村慎也(モッズ・ヘア)
スタイリスト=小橋淳子
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