ジョン・カビラ、高島彩、斎藤工のオスカー注目作は?
世界中が注目する映画の祭典、第87回アカデミー賞授賞式。WOWOWでは今年も、日本時間の2月23日(月)午前9:00より独占生中継を行う。今年は番組の案内役を、ジョン・カビラと高島彩が、レッドカーペットナビゲーターを斎藤工が務める。そこで3人にノミネート作品についてクロストークをしてもらった。
高島はノミネート作品のなかで、リチャード・リンクレイター監督作『6才のボクが、大人になるまで。』(14)に強い思い入れがあるようだ。「女性の34歳からの12年間をずっと撮られ続けることを決断した(パトリシア・アークエットの)勇気はすごいなと。女性としての浮き沈みや心境を重ね合わせながら見ることができて、応援したい気持ちになれました」。
ジョン・カビラも同作について「未成年の俳優を12年拘束できるような契約ってないらしいんです。12年かけて撮るってこと自体も常識破りだし、契約すら想定されてなかった。監督は自分の娘を作品に差し出すような感じで撮っていったんですよね。アメリカが抱えているさまざまな課題を、見事に盛り込んである映画でした」と感心する。
他にも、作品賞にノミネートされたウェス・アンダーソン監督作『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)について「よくぞ、入れてくれた!」とうれしそうに言う。「カルト的な作品を手掛けてきた監督ならではの、圧倒的な様式美の追求がすごかった。メイキング映像を見ると、いかに俳優さん、女優さんが監督をリスペクトしているのかがわかる。まさにマジカルな時間を共有しているという、ムービーマジックがここにあるのかなと」。
斎藤は「作品賞では、みんなが『6才のボクが、大人になるまで。』を評価する流れですね。もちろん僕もそうですが、個人的には、見たてほやほやの『セッション』(4月17日公開)のショックがいまは大きいです。また、『Selma(原題)』が入ったというのも、いまのアカデミー賞らしいなと思います」と総評を述べた。
斎藤は若手俳優陣にもエールを贈る。「『博士と彼女のセオリー』(3月13日公開)の役者陣に旋風を巻き起こしてほしい。男性版のジェニファー・ローレンスじゃないけど、そういうことが近年あまりなかったような気がして。『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(3月13日公開)の(ベネディクト・)カンバーバッチもそうですが、若い風が欲しいので、(エディ・)レッドメインは応援したいです」。
ジョン・カビラも「確かに、“スター・イズ・ボーン”を見たいというのはあります。だから、日本の女性のみなさん、ごめんなさい!カンバーバッチではなく、僕もレッドメインです」とおちゃめに笑う。
高島は「カンバーバッチの何かに取り憑かれたような演技には、心が動かされました」と言いながら、『アメリカン・スナイパー』(2月21日公開)のブラッドリー・クーパーに熱い視線を注ぐ。「肉体改造して18kgパンプアップした体をちょっと見てみたいと思いませんか?『フォックスキャッチャー』(2月14日公開)のスティーヴ・カレルもそうですが、ちょっと狂気じみた芝居というか、怪演には惹かれます」。
『アメリカン・スナイパー』についてはジョン・カビラも「作品賞にノミネートされた8作品のなかで、唯一ブロックバスタームービーですよね。アメリカの保守とリベラルを真っ二つにするような作品になっています。実在のスナイパーで、4度もイラクに行ってるし、スナイプの記録を塗り替えたのも異例。自分も家族を抱えていながら、弾薬を運ぶ少年を撃つかどうかという岐路に立たされるシーンもあるんです」と見どころを語る
また、カビラと斎藤は、2人とも『セッション』で助演男優賞にノミネートされたJ・K・シモンズを絶賛する。カビラは「よくぞここまで演じきったなと」とうなる。「アメリカ映画って、何でこんなに鬼軍曹が好きなんでしょう?今回は、J・Kの妥協なき悪役が素晴らしかった。綱が切れるんじゃないかと思うくらいに引っ張っておきながら、時々緩める。その緩め具合がたまらなく嫌らしい。工さんは、そういう鬼コーチに揺さぶられたいそうですよね?」。
斎藤は「また、そういうことを言うと、それが見出しになりますから」と苦笑い。「僕の時代はそれが当然だったし、いま振り返ると、それが先生たちの愛情だったんですよね。あの映画は、半分、デイミアン・チャゼル監督の実体験らしくて。戦いを挑むような感じだけど、根底に揺るがないリスペクトがある。あれほどの環境に身を置かなければ、高みには到達できないんだってことが、うまく描かれていました」と賞賛。
アカデミー賞授賞式については「ちょっとワールドカップなどに近いんですが、そういう世界的な祭典で、日本以外のプレイヤーやクリエイターたちをチェックしてほしいです」と訴える。俳優として活躍するだけではなく、近年短編映画を監督するなど、制作側にも意欲的に携わろうとしている斎藤は、とりわけ賞レースに対して熱い思いを抱いているようだ。
「近年、日本の実写映画がノミネートされていないですよね。日本はアニメが強いというのはすごく誇らしいことですが、実写映画がその先に届くにはどうしたら良いのかと、日本映画界自体が考えてほしい気がします。スポーツだと、世界基準を軸に育成が行われていたりするし。もちろん、日本でも、ヨーロッパの方で評価されている河瀬直美さんや塚本晋也さん、(北野)たけしさんもいらっしゃいますが、やっぱりアカデミー賞は特別な舞台だと思うんです」
「だからこそ、僕たち若い世代が、どうしたらそこに入れるかってことをもっと意識しながら、邦画界が切磋琢磨できたら良いなと思います。そうすれば、映画の半径が広がるので。僕自身は、身の丈というのをテーマに、毎年、少しずつ半径を広げていけたらと思っています」。
いろんな話題作がラインナップされている中、長編アニメーション映画賞にノミネートされた高畑勲監督作『かぐや姫の物語』(13) や、短編アニメ映画賞にノミネートされた堤大介監督とロバート・コンドウ監督による短編アニメ『The Dam Keeper(原題)』も気になるところだ。当日は3人のナビゲートで、映画界最大の祭典をたっぷりと楽しみたい。【取材・文/山崎伸子】