エディ・レッドメインの驚くべき進化の理由「恐怖心が僕を奮い立たせる」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
エディ・レッドメインの驚くべき進化の理由「恐怖心が僕を奮い立たせる」

インタビュー

エディ・レッドメインの驚くべき進化の理由「恐怖心が僕を奮い立たせる」

『レ・ミゼラブル』ので若き革命家マリウス、『博士と彼女のセオリー』での車椅子の物理学者ホーキング博士、3月18日より公開となる『リリーのすべて』でのトランスジェンダー役。難役ともいうべきキャラクターにチャレンジしている英国俳優エディ・レッドメインは、「恐怖心が僕を奮い立たせてくれるんだ」と告白する。「役をもらったときは怖くて仕方がない」という意外な素顔を明かしてくれた。

世界で初めて性別適合手術を受けたデンマーク人、リリー・エルベの実話を基に、命の危険を冒してでも自分らしく生きることを臨んだ主人公と、その妻ゲルダとの魂の触れ合いを描く『リリーのすべて』。エディがトム・フーパー監督から脚本を渡されたのは、『レ・ミゼラブル』の撮影中のことだったそう。「心から感動して圧倒された。ぜひ参加したい」と思ったそうだが、「まだそのときは企画開発の段階で、撮影のめどは立っていなかったんだ。『やりたい』とは思っていたものの、実際に監督から『作品が進められそうだ』と聞いたときには、『ええ!?どうしよう!』と思ったよ」と大きな笑顔を見せながら振り返る。

「『博士と彼女のセオリー』では、4、5人の方がホーキング博士を演じることを断っていたようで。ある日、ジェームズ・マーシュ監督から『君だったらどう演じる?』という電話があったんだ。だから僕は、電話口で演じてみせたんだよ(笑)。それで役をもらえたんだけれど、『やった!』と喜んだすぐ後には、『どうしよう!どうやって演じたらいいんだろう』って思ったよ。僕はすごく怖がりな方で、いつもおびえてしまうんだよ」

意外な言葉を口にするが、「そんな恐怖心が僕を奮い立たせてくれるんだ」と力強く語る。「恐怖心があるからこそ、もっと頑張らなきゃと努力しようと思える。役者という仕事を続けていく中で、きっと大失敗もするだろう。エディ、大丈夫か?って思われるような芝居をしてしまうかもしれない。でも僕はトライし続けることが大切だと思っている。いい演技をするという努力をするしかないんだよ」

謙虚さと共に熱い思いが溢れ出す。それは役者業が、素晴らしい体験を得られるものだと実感しているからだ。「役者というのは、役をもらえるだけでもすごく幸運なことなんだ。演じることが楽しいだけでなく、それが仕事として成立するなんて本当にすごいこと。リリーやホーキング博士のような興味深い人物を演じられるということだけでも、夢を超えたような体験だ」

リリーも難役中の難役だ。「彼女の内的風景がどんなものかを考えながら役作りをしたんだ。アイナーという男性時代を経て、どのようにリリーとして生きられるようになれるか。ひとつひとつのステージを考えていったんだ」と心の動きを柱として役作りに挑んだ。女性らしい仕草は「トランスジェンダーの方々の話も参考にした。あと、『博士と彼女のセオリー』でも動きの振り付けのコーチをしてくれたアレックス・レイノルズが、今回も参加してくれているんだ」と撮影前からみっちりと準備をした。

そしてリリーの心象風景とともに、妻ゲルダの存在も胸に刻んで演じた。「トランスジェンダーのカップルで、あるがままの自分としての人生を生きるために、自分のすべてを捧げたいとおっしゃっていた方がいて。でもその方には心から愛しているパートナーもいて。あるがままになるというプロセスは、いわば自分のための行為なんだよね。つまり、自分だけのためにやっていることと、パートナーと二人で育んでいる関係性があって。リリーを演じる上では、相手への思いやりがどこまで深いものなのかということを自問自答することも、とても重要なポイントだったよ」

トランスジェンダーのリリーを演じるという経験を通して、大きな役割も実感した。「トランスジェンダーの方にリサーチをする中で、リリーとゲルダの物語が多くの人にとってのアイコンなんだということを知った」というが、『ジュピター』でタッグを組んだウォシャウスキー監督の存在も大きかったそう。「ラナ(ウォシャウスキー)がものすごく情熱的にリリーの話をしてくれて。そのときには、すごく大きな責任を担うんだと奮い立たされたよ。たくさんのトランスジェンダーの方に話を聞いたけれど、みなさん自分の経験をオープンに話してくれて。より一層、頑張らなきゃと思ったんだ」

くしゃっとした笑顔を絶やさず、インタビューに答えてくれたエディ。謙虚で情熱的な人柄は好きにならずにいられないような魅力に溢れていた。彼が魂を込めて演じるキャラクターたちは、「そこに本当に生きている人」として目の前に現れるかのよう。ぜひスクリーンで、リリーの生き方と大きな愛を感じてほしい。【取材・文/成田おり枝】

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