コン・リー
小金宝
1930年の上海を舞台に、黒社会の首領の囲い者である歌姫の運命を、7日間という時間のなかで、その召使いとなった一人の少年の視点から描く。当時のモダニズム都市、上海を華麗に再現した美術、撮影が見もの。なお、監督チャン・イーモウと主演コン・リーは本作を最後に私的関係を解消、最後のコンビ作とも言われている。原作は、本作のために書き下ろされたリー・シャオの「門規」。撮影は、「画魂」のリュイ・ユエ、美術は「ハイジャック・台湾海峡緊急指令」のツァオ・チウピン、音響は「さらば、わが愛/覇王別姫」のタオ・チン、編集は、チャン・イーモウとコンビのトー・ユアン。出演は、「花の影」のコン・リー、「菊豆」のリー・パオティエン、「青い凧」のリー・シュエチェン。95年、カンヌ国際映画祭高等技術賞、ニューヨーク映画批評家協会賞撮影賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞撮影賞、D.Wグリフィス賞外国映画賞/表現の自由賞をそれぞれ受賞。また、第68回アカデミー賞撮影賞、ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞にノミネートされた。
1930年。頽廃し、爛熟美を湛えたモダニズム都市、上海。その港に、一人の少年が降り立った。彼の名は水生(ワン・シャオシャオ)、叔父の六叔(リー・シュエチェン)を頼り、街で一旗揚げようとやって来たのだ。〈1日目〉叔父に連れて行かれたのは、街の顔役唐旦那(リー・パオティエン)の豪邸と、彼の愛人小金宝(コン・リー)が歌うナイトクラブだった。水生は、今日からその金宝の召し使いとして働くのだ。スターである金宝は、楽屋裏では高慢極まりなく振舞っているが、誰もその前歴は知らない、謎の女だ。唐には宋(スン・チュン)という子分と、家内の全てを把握している年寄りの執事(チェン・シュウ)がいた。唐は現在、街を二分する余旦那(リュウ・チャン)というもう一人の顔役と対立しており、一触即発の事態を回避するべく奔走していた。めまぐるしい一日が終わり、金宝の家の小部屋で床に就く水生。そして金宝は、ある男を寝室に招き入れる。それは宋で、二人は唐の目を盗んで関係を結んでいたのだ。〈2日目〉唐は余を自分のクラブに招待する。余は金宝の歌を楽しむが、顔役同士の談合に自分のステージを利用された金宝は面白くない。夜、ヒステリックにわめき散らす金宝、相手は誰なのか。〈3日目〉余一味の襲撃で、唐の子分たちが多数死傷する。六叔も死んだ。呆然とする水生だったが、この時、すでに彼らの運命はある局面へ向け、急激に加速度を増して動き出していた。〈4日目〉一行は唐の隠れ家のある小島へ渡った。宋も連れず、全くのお忍びだった。勝手に島に出入りしたものは、容赦なく殺すという。〈5日目〉島には翠花(チャン・パオイン)と、阿嬌(ヤン・チェンチェン)という母娘がいた。翠花には島の向かいに住む男がいたが、金宝がその情事の現場に出くわしてしまう。〈6日目〉島の自然のなかで、頑なな金宝の心もいつしかほぐれていた。阿嬌に歌を教え、水生と語らう金宝。彼女は、自分も田舎の出であることを告白し、子供の頃の思い出を語る。金宝は、水生に彼の夢である豆腐屋開店の資金が貯まったら上海を去るように論し、数枚の硬貨を与えるのだった。翠花の男すら、公言通りに殺害する唐に、さすがの金宝の心も離れていたのだ。水面下で、何かが動いている、何かが。〈7日目〉全てが急転した。宋を島に呼び寄せる唐。夜、草むらで用を足していた水生が、偶然宋の手下たちの金宝殺害計画を盗み聴きする。慌てて唐たちの部屋に駆け込み、一部始終を語る水生。子分たちに取り押さえられる宋。実は宋は余と内通していたのだった。高笑いを浮かべる唐、彼は執事を使い、全てを知っていたのだ。唐にとっては、来たるべき時が来たに過ぎなかった。宋、そして彼と通じていた金宝には、ただ残酷な処刑が待っていた。二人そろって生き埋めにされるのだ。金宝に心寄せ始めていた水生は唐に抵抗するが、敵うはずもなかった。翌朝。何もかもが終わった。上海へ向かう船上の一行。そのなかには、母翠花も消されたことを知らない、阿嬌の顔もあった。水生は、逆さ吊りという冷酷な私刑を受けていた。“犬”としての調教の為に。阿嬌や水生もまた、あの二人のようになるのだろうか。水生の袂から、金宝がくれた硬貨が滑り落ち、水面に消え、無垢な阿嬌の美しい歌声が流れていった。
監督
脚本
原作
製作
製作
製作
エグゼクティブプロデューサー
エグゼクティブプロデューサー
撮影
美術
編集
音響
作曲
字幕
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