ヤン・リーピン
タナ
監督・脚本・主演のヤン・リーピンは有名な舞踏家。本作は彼女自身の体験と芸術観に基づいて作られた。「黄色い大地」に主演、本作でも重要な役柄で出演したワン・シュエチーが共同監督をつとめた。また音楽には「黄色い大地」「紅いコーリャン」「さらば、わが愛/覇王別姫」でお馴染みの現代中国映画音楽の第一人者チャオ・チーピン。
彗星のように中国舞踏界に登場したタナ(ヤン・リーピン、少女時代はタナ)の過去は、雲南省の少数民族出身という以外、謎に包まれていた。最近タナはスポットライトを浴びると、目が見えなくなる。医者は心理的なことが原因だという。タナは少女の頃の自分に思いをはせた。母は出産時の出血多量で、父は血塗れの牛の心臓をえぐり取った直後に死んだ。文化大革命の頃、紅衛兵のフェノシャン(ワン・チン)が見せた映画に合わせて自然に身体が動いた。彼は別れ際に鏡をくれた。タナは初めて自分の姿を見た。そして、集落に伝わる新婚の床入れの儀式を覗見たタナは、孔雀の装いをして踊る酋長のマオティン(チョウ・バイウー)の舞いに魅せられた。初潮におびえるタナをマオティンはやさしく抱いた。この時タナは女になった。失明すると聞かされたマネージャーのウェン(ワン・シュエチー)は、あのマオティンのために新しい孔雀の舞いを踊りたいというタナの願いを叶えるため奔走する。ウェンに手を引かれて舞台に立つタナ。孔雀の舞いを華麗に踊り終えたタナに万雷の拍手が起こる。しかし、会場には一人の観客もいなかった。
[c]キネマ旬報社