日本では一般にあまり認知されていない“ディスレクシア”と呼ばれる学習障がいを抱えた1人の女性の生き方を追ったドキュメンタリー。知能的には問題なく、外国語も習得できるものの、読み書きが困難な障がいを抱えたために転職を繰り返すことになった砂長宏子さんの生き方を通じて、この障がいに対する理解を求める。
ストーリー
砂長宏子さん、通称“美んちゃん”は、見た目もおしゃべりも普通で友達も沢山いる。でも、書類や報告書作り、本を読むことが大の苦手。こうした困難さを理解されないまま大人になり、職場を次々とクビになってきた。子どもの時から、どんなに頑張っても成績が上がらない。問題は分かっても読み書きに時間がかかったり、文字を間違えたり、そのほか、うっかりミスが多いのだ。日本での大学受験を諦め、ロンドンの美術大学に入った美んちゃんは、ここで“ディスレクシア”の可能性が高いと指摘された。“ディスレクシア”とは、知能的には問題なく、聴覚、視覚の知覚的機能は正常にもかかわらず、読み書きに関して特徴のあるつまずきや学習の困難を示す障がいのひとつ。美んちゃんが好きなのは、苦手な読み書きとは関係のない、得意な料理の腕を活かしての料理教室やヘアメイクのアルバイトなどの仕事。高校生の時、両親が離婚し、それからはお母さんが働きながら育ててくれた。しかし、お母さんは最近まで美んちゃんがディスレクシアであることを理解していなかった。親子水入らずの会話も、本音の出し合いで対立したり、すれ違ったり……。ディスレクシアであることを隠したまま、何とか日本で就職。そのころ、ネットでディスレクシアについて調べてもほとんど出てこなかった。どうして良いか分からないまま1人で悩んでいた時、偶然にディスレクシアの啓蒙・支援活動をしているNPO法人に出会う。ここで、ディスレクシアで苦しんでいるのは自分一人ではなく、共に悩みを打ち明けられる仲間がいることを知り、自信を持って前向きに生きられるようになった。ハローワークに通いながら、美術展への出品、企業での講演、チャリティ駅伝への参加、障がい者によるビジネスプランコンテストへの参加と積極的に活動。美んちゃんは自立に向けて歩み始める……。