監督
2011年の東日本大震災による津波で被災した人々の声を収めたドキュメンタリー「なみのおと」の続編。震災から1年後の宮城県気仙沼市を訪れ、現地の人々にインタビューした。酒井耕、濱口竜介(「親密さ」)の共同監督による東北記録映画3部作の第2部に当たり、福島県新地町を取材した「なみのこえ 新地町」との連作。
ストーリー
震災から1年後の宮城県気仙沼市でインタビューを進める中で心掛けたことは、聞く相手を被災の過酷さや体験談の鮮烈さによっては選ばないということ。出会った多くの被災者から“私たちよりもっと悲惨な体験をした人がいるから、そちらに聞いて欲しい”と、何度となく言われた。地震でライフラインが止まった人、自宅が半壊した人、家を流された人、親しい人や家族を波に呑まれた人……。どこかにある“被災の中心”から離れるほど語れない。彼らは被災したにもかかわらず、その度合いによって“負い目”を感じているようだった。しかし、“被災の中心”を求めれば、行きつく先は“声なき死者”である。決して聞けない“死者の声”が生き残った人々の声を封じていた。本作に登場する人々は、単に震災のことだけを語るわけではない。彼らは被災体験を語り合ううちに、インタビューを“おしゃべり”へと変えてゆく。そこにあるのは“被災者”の声ではなく、彼ら1人ひとりの声だ。監督たちはこの声を100年先まで残したいと考えた。100年後の未来、私たちは同じく死者であり、この映画は“死者の声”になっているだろう。この映画に収められた彼らの声と、今は聞くことのできない波に消えた声が、100年後の未来で繋がっていくことを祈って、この映画は製作されている。
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作品データ
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