「オーディション番組」の裏側は…『ティーン・スピリット』に込められた“静謐”と“高揚”
『ラ・ラ・ランド』(16)の音楽チームが再結集し、「マレフィセント」シリーズのエル・ファニングが主演を務めた青春音楽映画『ティーン・スピリット』が先行デジタル配信中、DVDが6月5日(金)にリリースされる。歌手になるという夢を追う少女の姿と、アレンジが加えられたヒットソングの数々を通して、いまなお世界中で絶大な人気を博している“公開オーディション番組”の裏側を描いた本作。本稿ではその魅力へと迫っていきたい。
物語の舞台はイギリス南部に位置する小さな島・ワイト島。ポーランド移民で厳格な母マーラ(アグニエシュカ・グロホウスカ)と2人暮らしの17歳のヴァイオレット(エル・ファニング)は、音楽を唯一の心の拠りどころにしていた。そんなある日、元オペラ歌手のヴラド(ズラッコ・ブリッチ)に出会いその歌声を認められたヴァイオレットは、ワイト島で予選が開催される国際的な公開オーディション番組「ティーンスピリット」に参加することを決意。ヴラドの協力を得ながら、夢をつかむためにオーディションに挑んでいくことに。
本作に登場する公開オーディション番組の「ティーンスピリット」のモチーフとなったのは、イギリスで国民的人気を博し、スーザン・ボイルなどを輩出した「ブリテンズ・ゴット・タレント」。同番組のアメリカ版である「アメリカズ・ゴット・タレント」や、同じ時期に一世を風靡した「アメリカン・アイドル」、さらに近年ではIZ*ONEを輩出した韓国の「PRODUCE48」など、公開オーディションを映したリアリティ番組はいまなお、むしろSNSの発展で誰もがスターになる可能性を秘めたいまだからこそ人気は増す一方だ。
これらの番組に共通しているのは、実力のあるものや努力を積んでいく者たちが視聴者から受け入れられることで“表舞台”で輝くチャンスを与えられていく姿にほかならない。本作では、エルが演じるヴァイオレットがオーディションを勝ち進んでいく上で直面するショービジネスの実態であったり、彼女を支えるマネージャーとなるヴラドや母親といった周囲の人物とのドラマのように、リアリティ番組では描きだされない“裏側”をまざまざと描きだしていく。その静謐なドラマ性と高揚感あふれるオーディションシーンとのコントラストが、映画としての魅力を高めているといえよう。