『MOTHER マザー』『新聞記者』のプロデューサーが語る映画製作の軸…「“アンチテーゼ”が映画と社会を発展させる」
現在公開中の『MOTHER マザー』や『新聞記者』(19)、『宮本から君へ』(19)など、現代社会が抱える問題やタブーに切り込んだ作品を多く手がけてきた映画配給会社「スターサンズ」。日本映画界において独自の地位を築く同社の歩みや作品づくりの軸を聞くため、代表取締役でありプロデューサーとしても映画製作に携わる河村光庸に電話インタビューを敢行。映画への思いはもちろん、文化芸術の在り方についても語っていただいた。
『トレインスポッティング』(96)の原作本などを手掛けた出版業や、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(98)や『オペラ座の怪人』(04)といった海外作品の日本公開にもかかわったあと、2008年にスターサンズを設立した河村。ドキュメンタリー『牛の鈴音』(08)、ロングランヒットとなったヤン・イクチュン監督作『息もできない』(08)を経て、エグゼクティブプロデューサーを務めた『かぞくのくに』(11)で映画製作者に贈られる藤本賞やブルーリボン賞を受賞するなど、作品とともにその功績も高く評価された。
「社会の“不条理”を自由に表現できるのが映画」
北朝鮮と日本を舞台に離ればなれになった在日朝鮮人家族の苦悩を描く『かぞくのくに』をはじめ、『あゝ、荒野』二部作、『愛しのアイリーン』(18)、『潤一』(19)といった骨太な作品を企画・製作してきたスターサンズ。作品づくりで大切にしていることについて河村は、「骨太という言い方が合っているのかはわかりませんが、社会の“不条理”など、テレビやほかのメディアが扱わない題材を、自分たちの意思で自由に表現できるのが映画だと思っています」と説明。
一方で、興行としての立ち位置も大事にしている。「映画なので多くの人に観ていただかないといけません。インデペンデント系の作品に多いアートに寄るのではなく、もちろんそれも重要なのですが、エンターテインメント性を優先させて、できるだけオリジナリティのある作品を作っていきたいと考えています」
続けて、新型コロナウイルスに揺れる現在の情勢にも触れながら、映画など文化芸術の社会における役割についても言及。「ドイツのアンゲラ・メルケル首相が『文化芸術は不要不急の娯楽ではない。人類にとって最も重要な“多様性”や“創造性”をはぐくむ社会を作る重要なインフラです』と語っていました。いまはまさに、そのような社会を守っていかなければなりません。映画を通して、人間性豊かな社会づくりに貢献したいですね」
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