“北欧の至宝”マッツ・ミケルセンが魅せる、変態性と狂気…封印されてきた幻の傑作とは?
レクター博士を演じたテレビドラマ「ハンニバル」、カンヌ国際映画祭男優賞に輝いた『偽りなき者』(12)などで知られるデンマークの名優マッツ・ミケルセン。その洗練されたたたずまいから“北欧の至宝”と呼ばれるマッツが、エキセントリックな聖職者を演じた『アダムズ・アップル』(05)の日本版DVDが現在発売中だ。本作の監督を務めたのは、脚本家としても数々のマッツ出演作に携わり、監督作では彼の“斜め上”の魅力を引き出してきたアナス・トマス・イェンセン。その系譜を辿りながら、独創的な二人のタッグ作を紹介する。
イェンセンが監督としてマッツを迎えたのは、本作と『フレッシュ・デリ』(03)、『メン&チキン』(15)を含めた3本。特に『アダムズ・アップル』はデンマークのアカデミー賞にあたるロバート賞で作品賞や脚本賞に輝くなど、“未知の傑作”としてマッツファン、北欧映画ファンに知られていたが、日本では長らく劇場で公開されることはなかった。しかし、2017年の北欧映画を紹介する映画祭「トーキョーノーザンライツフェスティバル」で上映されると絶賛を博し、2019年には有志の働きによって待望の一般劇場公開も実現した。
変態的なマッツの狂気を引き出すイェンセン
『フレッシュ・デリ』はお客がまったく来ない肉屋を経営する二人の男が主人公で、マッツはその一人、スヴェンを演じている。内気な性格で人付き合いも苦手なスヴェンは、店に来た修理業者を誤って冷蔵庫に閉じ込め、そのまま死亡させてしまう。しかし、証拠隠滅のため死体をマリネにして販売したところ、これが“美味い”と評判になり店が大繁盛していくが…という物語だ。本作でのマッツは前髪を頭頂部まで剃り上げ、広くなったおでこを披露。額に汗をかき挙動不審な態度を取る様子は、普段の美しさのかけらもない。
『メン&チキン』ではさらにクセの強いマッツを見ることができる。冴えない大学教授のガブリエルと、女とトリビアにしか興味のないエリアスの兄弟は、亡き父が実の親ではなく、それぞれ母親も違うことを知り、本当の父親に会いに行こうとする。行き着いた先で彼らの前に現れたのは、家畜が放し飼いにされた寂れた屋敷と奇妙な3人の異母兄弟たちだった。マッツ演じるエリアスはところかまわずにマスターベーションをするという特殊な性癖を持った男。とぼけた表情におかしな口調、落ち着きがない動作などが特徴で、物語が進むにつれて暴走し、狂っていく姿が強烈な印象を残す。
Amazon ディスク・オンデマンドにて受注販売中
価格:3,500円+税
発売・販売元:M&M Productions