全編“墨絵”のアニメーションで生まれ変わった傑作小説…『ヴィル・ヌーヴ』が創出する陰影に引き込まれる
“陰影”が印象的な白と黒の映像世界
本作で初の長編アニメーションに挑戦したラペリエール監督は、写真や実写の映像、イラストなど多岐にわたる芸術表現を駆使し、これまでにも数多くのアート作品を発表してきた。今回は監督や脚本に加え、一人で1年半かけてプリプロダクションを行い、すべての原画も担当している。制作へのこだわりや墨を選んだ理由について振り返ってもらった。
「一つのショットに対し10枚ぐらいの原画を私が描いて、ビジュアルのキーになるものをアニメーターに渡していきました。ただ、各アニメーターへの自由度も確保していて、それぞれの考えでキャラクターを動かしているところもあります。作風は作品によって変えているのですが、今回は写真のようなリアルさよりも、もっとオーガニックなものを求めました」
墨による色のない白黒の映像には独特の世界が広がっている。「白と黒しか使わないのは脚本段階から決めていました。陰影を使えるのも大きかったですね。カラーよりも見やすさが高まったと思いますし、透明さ、イメージの重なりも可能にしてくれています。インクは一歩間違えるとすべて描き直さないといけない大変さはあるのですが、線が動いたり、色ムラが現れたりと微妙な表現が可能なところが好きです。しかし、次の作品ではアニメーションと3DCGを組み合わせた映像を予定しています(笑)」
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