中野量太や白石和彌も輩出!若手監督の登竜門「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」とは?
才能ある若手映像クリエイターの発掘に貢献してきた「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」。今年で17回目を迎える同映画祭は、新型コロナウイルス感染症拡大の状況を鑑みて、その歴史で初めて9月26日(土)~10月4日(日)にオンラインでの開催を決定した。現在も第一線で活躍する国内外の映画監督たちを輩出してきた同映画祭の記録や理念を紹介したい。
若手映像クリエイターの登竜門として国内外に浸透
2004年に埼玉県川口市で誕生したSKIPシティ国際Dシネマ映画祭は、いまや映画の新たなスタンダードとなったデジタルシネマ(デジタルで撮影・編集された映像作品)にいち早くフォーカスした国際コンペティション映画祭だ。その中核であるコンペティションでは、長編作品を対象とする国際コンペティションと、長編部門と短編部門を設けた国内コンペティションがあり、特に日本で映像クリエイターを目指す人たちにとっての登竜門的役割を担ってきた。
同映画祭で賞を受賞してきた作品や監督の多くが、その後も世界で目覚ましい活躍を見せている。2005年の長編部門グランプリに輝いた『ブラザーズ』(のちに『ある愛の風景』の邦題で上映)を監督したデンマークの名匠、スサンネ・ビアは『未来を生きる君たちへ』(10)でアカデミー賞外国語映画賞を獲得。2007年に『うつろいの季節(とき)』(06)で同部門を受賞したヌリ・ビルゲ・ジェイランは、『雪の轍』(14)でパルムドールに輝くなど、カンヌ国際映画祭の常連として存在感を発揮している。
国内では、『孤狼の血』(18)、『凪待ち』(19)などの白石和彌が2009年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編部門のSKIPシティアワードを獲得し、10月2日(金)に公開を迎える『浅田家!』への注目も集まっている中野量太も2012年に同じく長編部門で、『チチを撮りに』が監督賞とSKIPシティアワードをW受賞した。このほか、『カメラを止めるな!』(17)のロングランヒットも記憶に新しい上田慎一郎は2015年に『テイク8』で短編部門の奨励賞に輝いている。
バリアフリー上映や親子で楽しめる特集も
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の魅力は、コンペティションだけでなく、様々な試みや趣向を凝らした特集上映にもある。2010年に山田洋次の名作『幸福の黄色いハンカチ』(77)のデジタルリマスター版が上映された際は、同作品を耳や目の不自由な人も楽しめるようにと、字幕&音声ガイド付きのバリアフリー上映が実施された。2013年には若手映像クリエイターの登竜門の先駆けでもあるロッテルダム国際映画祭で話題を集めた3作品の日本初上映とトークセッションを行う「ロッテルダム国際映画祭特集上映」を展開。
2015年には開催7日目を「アニメDAY」として、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』(02)や『STAND BY ME ドラえもん』(14)といった親子で楽しめるアニメ作品を上映し、さいたま市浦和地区を舞台にしたテレビアニメ「浦和の調ちゃん」の一挙上映も行った。そのほか、シネマ歌舞伎やオペラの舞台を堪能できる「Livespire」、著名人が登壇するトークショーなども実施されてきた。