富田克也&相澤虎之助とアピチャッポン・ウィーラセタクン監督が語り合う、“国境を越えた映画づくり”の秘訣

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富田克也&相澤虎之助とアピチャッポン・ウィーラセタクン監督が語り合う、“国境を越えた映画づくり”の秘訣

「アジア 交流ラウンジ」でアピチャッポン・ウィーラセタクン×空族のトークが実現!
「アジア 交流ラウンジ」でアピチャッポン・ウィーラセタクン×空族のトークが実現!

第33回東京国際映画祭の新たな取り組みとしてスタートしたトークシリーズ「アジア交流ラウンジ」。国際交流基金アジアセンターとの共催のもと、アジア各国・地域を代表する映画監督と、日本の第一線で活躍する映画人とが様々なテーマでオンライントークを展開していく。
11月3日に行われた第3回は、『バンコクナイツ』(16)などを手掛けた映像制作集団・空族の富田克也と相澤虎之助が登壇。オンラインで登壇したタイを代表する国際派監督のアピチャッポン・ウィーラセタクンと共に、国境を越えて映画を作ることの難しさや両者の作品に根差す仏教的価値観、そしてウィーラセタクン監督の新作『Memoria』について語り合った。

1970年にバンコクで生まれタイ東北部のコーンケーンで育ったウィーラセタクンは、世界各国で展覧会やインスタレーションを展開するなど、アーティストとしての活動も知られている。1994年から映像制作をはじめ、『ブンミおじさんの森』(10)ではタイ映画として初めて第63回カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞。アカデミー賞受賞経験のあるティルダ・スウィントンを主演に迎え、コロンビアで撮影した最新作『Memoria』が現在待機している。

『ブンミおじさんの森』公開時に対談を行なったり、『バンコクナイツ』の撮影前にウィーラセタクンのもとを訪れタイの文化について話を聞くなど、親しい間柄の3人。トークセッション中も空族の二人は、ウィーラセタクンの愛称である“ジョー”に、“兄さん”という親しみを込めた“ピー”を付けて“ピージョー”と呼んでいた。

「違う文化に身を置くことによって新たな視点が生まれた」(ウィーラセタクン)

ウィーラセタクンを親しみ込めて“ピージョー”と呼ぶ、空族の富田克也監督
ウィーラセタクンを親しみ込めて“ピージョー”と呼ぶ、空族の富田克也監督[c]2020 TIFF

ウィーラセタクン「実は今日も最新作の仕上げ作業をしていてスタジオにいるんです。これが仕上がったら、メキシコにあるラボに映画を送る予定。長いこと取り組んでいたので、離島のビーチでのんびりしたいと思っています。ぜひ日本のお客さんにもこの映画を観ていただきたいと思っています」

富田「『Memoria』というタイトルを聞いただけでめちゃくちゃ楽しみです!」

ウィーラセタクン「“記憶”という意味ではありますけど、撮影したコロンビアでは皆さん“暴力”や“過去”と結びつけていました。軍事的衝突で政権が不安定だった頃と直結するタイトルでもあります」

富田「僕もコロンビアに行ったことがあるのですが、ピージョーがコロンビアで映画を撮ると聞いた時には興奮しました。相澤共々南米に長らく想いを馳せていたので、まずはなぜコロンビアを選んだのか聞いてみたいです」

ウィーラセタクン「コロンビアの文明や古い歴史、アマゾンやジャングルに魅力を感じていました。でも実は、街にしか行っていないんです。人々と話をして、皆さんがどんな記憶を持っているのかを聞いたり、様々な景色を見てから脚本を書き始めました。コロンビアに行ったことは本当に良かったと思っています。目を見開く経験ばかりで、違う文化に身を置くことによって新たな視点が生まれました」

富田「日本で生まれ育った僕たちも、タイで映画を撮るとなった時に東南アジアを長く旅してもう一度“アジア ”を客観視する機会を得ました。コロンビアに行った時には西洋のイメージを持っていたら、アジアのような感覚を味わうこともあって、東南アジアと南米がつながっているようにも思えたんです。ピージョーはどのように感じましたか?」

ウィーラセタクン「私はあくまでも部外者の目線で、自分自身の経験と訪れた印象に加えて、コロンビアの天候や建築、聞こえてくるいろいろな音や、そこかしこに隠されている暴力の歴史や記憶を感じていました。映画ではもっと抽象的に表現していますが、映画を撮る前と撮った後では印象は異なりました。映画は作った後も人間のように成長していく。ですから外国で映画を撮るということは、なかなか厄介なもので、その土地の文化や物語、記憶を経験していないと、できる表現に限りがあることを知りました。
だから富田さんの『バンコクナイツ』が本当に歴史にまで入り込んで、タイの人々の抱える不安を感じ取れる作品になっていたことにとても感銘を受けました。明らかに長く時間をかけてリサーチを重ねている、非常に勇敢な映画だと思います。特に後半のセリフのないパート。沈黙のなかでも、しっかりと伝わってくるものがありました」

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