中条あやみが振り返る、カヌー選手を演じる“覚悟”「大変な役柄こそが、私を成長させてくれた」
あの怒りには、遥の孤独感がすごく現れていると思いました
約1か月、カヌーの練習を経てクランクインした後も、「撮影現場の旧中川で、撮影の合間や後に練習をしていました」と語る。そしていよいよ撮影では、遥の“感情のアップダウン”をカヌーの技術習得の土台に載せ、演技としてアウトプット。中条は「高跳選手をしていた頃の遥は、イヤな奴なくらいに“ザ・女王”的な人でしたが、冒頭のそんなシーンが、すごく大事でした。というのも、あそこまで道を究めようと頑張っている人は、すごく孤独。常に自分との闘いをしていると思いました。遥はお父さんがなく、一人っ子だったのもあり、ずっと一人で闘ってきたという気持ちがあったんじゃないかな。そんな子が、すべてを捧げて来た陸上が出来なくなってしまったら…」と眉根を寄せる。
中条の言葉どおり、「すべてが奪われてしまった…という気持ちだったはず」だったろう。だからこそ、カヌーのコーチが最初、遥に“カヌーをやらないか”と声を掛けた際、遥は怒りを爆発させる。
「そりゃ、そうですよね。“うん、わかった、次はカヌーやる”なんて、とても言えない。あの怒りには、遥の孤独感がすごく現れていると思いました。でもカヌーに乗ってみて、カヌー教室の子どもたちが話しかけてくれたりすることで、自分一人で生きて来たわけではないんだな、と少しずつ気づかされ、みんなで支え合って生きて行こうという前向きな気持ちになっていくんです。遥の気持ちの変化や成長の分岐点としても、あの怒り爆発のシーンは、もっとも大切に演じたシーンです」
義肢装具士の颯太という存在も、支え合う仲間として、気付きをもたらしてくれた一人だ。演じる杉野遥亮とは、『覆面系ノイズ』以来、約5年ぶりの共演となる。
「遥が颯太から言われる“陸上のときは、すべて自分一人でやっていたつもりだったの?”というのが、一番強く印象に残った、かつ一番好きなセリフでした。自分自身にも跳ね返って、よくお母さんに“一人で生きて来たみたいな顔しちゃって”と言われたなあ、と思い出して(笑)。杉野君とは今回“ここは、こんな風に演じよう”と話し合ったり、アドリブも自然に入ったりしています。お互いに大人になったな、と(笑)。なんだか幼馴染みたいな感覚があるので、すごく凛々しくなって包容力も感じ、カッコいい大人の男性になっているのがうれしかったです」
衣装協力:Plan C、CLERGERIE、ALIITA