円卓の騎士、三蔵法師、ダ・ヴィンチ…実写映画で深まる『劇場版 FGOキャメロット 前編』サーヴァントの魅力

コラム

円卓の騎士、三蔵法師、ダ・ヴィンチ…実写映画で深まる『劇場版 FGOキャメロット 前編』サーヴァントの魅力

玄奘三蔵、ダ・ヴィンチが“女性”サーヴァントである理由

『劇場版 FGOキャメロット 前編』では、円卓の騎士たちの“聖都”と、オジマンディアス王が支配する“エジプト領”、暗殺集団が人々を庇護する“山の民”の集落という3勢力が対峙している。この勢力のひとつ、エジプト領に身を寄せているのが玄奘三蔵。唐代の高僧にして、「西遊記」の三蔵法師のモデルとなった人物である。

西遊記といえば、香港や日本でも幾度となく映像化され、『少林サッカー』(02)のチャウ・シンチー製作の『西遊記 はじまりのはじまり』(14)では三蔵法師は修行中の妖怪ハンターとして描かれている。

と、ここまでであなたは三藏について“男性”と思って読まれているのだろうか?それとも“女性”としてイメージしていただろうか?「西遊記」の三蔵法師、そして玄奘三蔵本人は男性とされているのだが、日本では1978~79年放送のテレビドラマ「西遊記」で夏目雅子が男性である三蔵法師を演じ、その高潔にして穏やか、中世的な佇まいが大きな反響を集め、以来、国内では同作が映像化される際は、役柄自体は男性ながら宮沢りえ、牧瀬里穂、深津絵里ら女優が演じるというのが定番となった。

玄奘三蔵はエルサレムの各勢力を渡り歩き、混沌とした状況のなか、なにが真理なのかを探究する
玄奘三蔵はエルサレムの各勢力を渡り歩き、混沌とした状況のなか、なにが真理なのかを探究する[c]TYPE-MOON / FGO6 ANIME PROJECT

『劇場版 FGOキャメロット 前編』では、玄奘三蔵は“女性”として登場するが、過去の映像作品で培われた印象も相まって違和感を覚えることがない。どちらかと言えば、高貴で穏やか…というよりも、腕っぷしの強いアクティブなお姉さん的な立ち位置に意外さを覚えるかもしれないが、そもそも玄奘三蔵は経典を求めて果てしなき放浪の旅を続けた人物。それくらいの個性がなければ旅が達成できなかったのでは?と逆に納得させられる気も…!?

玄奘三蔵のように『劇場版 FGOキャメロット 前編』では、本来男性とされる人物が女性サーヴァントとして登場する例がほかにもあり、その一人がレオナルド・ダ・ヴィンチである。大ヒットミステリー『ダ・ヴィンチ・コード』(06)では、自身の名画に人類史を揺るがす秘密を隠したとされ、『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』(11)では秘密裏に設計していた飛行船の争奪戦が展開するなど、映画においても“稀代の天才”として描かれることが多い。

そんな大天才が『劇場版 FGOキャメロット 前編』では、特異点修復のミッションを遂行する、人理継続保障機関カルデアが召喚したサーヴァントとして登場するが、生前に描いた傑作絵画「モナ・リザ」の美しさに心酔するあまり“モナ・リザそのもの”の姿で召喚されたという経緯がある。カルデアでは技術顧問を務め、今作では彼女が設計した砂漠をスイスイ走行できるバギーを開発。姿は変わっても“稀代の天才”ぶりは健在だ。

【写真を見る】モナ・リザの姿で召喚に応じたレオナルド・ダ・ヴィンチ(右)。通称は"ダ・ヴィンチちゃん”
【写真を見る】モナ・リザの姿で召喚に応じたレオナルド・ダ・ヴィンチ(右)。通称は"ダ・ヴィンチちゃん”[c]TYPE-MOON / FGO6 ANIME PROJECT

ダ・ヴィンチと同様、その人物のバックボーンを考察し女性化されたサーヴァントは原作のスマートフォン向けRPG「Fate/Grand Order」(FGO)にも多数登場する。葛飾北斎、ゴッホといった、その生涯が映画化されている人物も多く、ゲームと映画をあわせて楽しむことで、その人物の知られざるヒストリーや、作品内で女性として描かれる由縁などを理解することもできるだろう。

もちろん女性化されたキャラクター以外にも「FGO」には映画化もされた人物が多数、サーヴァントとして召喚される。その例を挙げ続けると枚挙にいとまがないので、それは別の機会にて。ここでお伝えしたいことは、ゲームで偉人を知り、その偉人の生涯に映画で触れ、よりゲームに登場する偉人に親しみを覚える…そんなエンタメにおける理想的な“円環”が「FGO」をきっかけに成立するということ。そして、その円環は『劇場版 FGOキャメロット 前編』にも該当するということだ。ゲームファンは映画を、映画ファンはゲームを、本作をきっかけに年末はじっくり“サーヴァント”たちのドラマに浸ってみるのもおもしろいのでは?

文/大場徹


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