豪華キャストの熱演と巧みな映像美…衝撃作『ファーストラヴ』を観るべき3つのポイント
豪華キャストたちによる、見ごたえのある演技
このような重厚なストーリーを成立させているのが、豪華なキャスト陣だ。北川、芳根、中村のほか、迦葉の義理の兄で由紀の夫である真壁我聞役に窪塚洋介、環菜の両親役に木村佳乃と板尾創路、由紀の母親役に高岡早紀と実力派たちが名を連ね、演技合戦を繰り広げていく。
心の闇をひも解いていくシリアスなストーリーや、複雑に絡み合った人間関係に加えて、面会室や法廷といった話し手に焦点が当たるシチュエーションも多いため、役者たちの演技を存分に堪能することができる本作。
北川が「完璧な女性だけど、どこか危うさや脆さがあるというふうに表現できたらいいなと思った」と話し、中村が「自分の経験と迦葉の経験してきたものの感覚が、どうにかリンクできないかと常に考えていた」と言うところからも、それぞれが演じるキャラクターが抱える複雑な心情を表現しようと向き合っていたことがわかる。
そのなかでも特に、引き込まれるような演技を見せているのが芳根だ。挑発的な顔や冷ややかな一面など場面ごとにコロコロと表情を変え、謎めいた印象を与えたかと思えば、「いまからでも私が彼女を救えるなら救いたいと、すごく思った」と、同情にも近い感覚を環菜に対して覚えたという言葉通り、キャラクターの内面に寄り添ったエモーショナルな芝居を披露。面会室で涙ながらに思いをぶちまける一幕など、感情を爆発させる演技は圧巻の一言だ。
登場人物に感情移入させる、巧みな映像表現
さらに、ストーリーや役者たちの演技に加えて注目したいのが、それらを支える映像美だ。メガホンをとった堤幸彦監督といえば、映画、ドラマのみならずCMやPVを手がけてきた豊富な経験があり、独特のカメラワークをはじめ、映像的な表現の巧みさで知られている。
本作を手がけるにあたり、「非常に細やかな心の闇というところを映像で表現するにはどうすればいいのだろうと、とにかく不安だった」とこぼしている堤監督だが、面会室のシーンでは、差し込む光の色味に変化をつけ、キャラクターの心情を表現するなど確かな手腕を発揮。
中村も「映像表現という意味でも、物語の登場人物にグッと入っていく」と絶賛しており、どんよりとした空の下を、血まみれの環菜が包丁を手にとぼとぼと歩く映像表現など、作品のダークな雰囲気を生かしつつ、観る者の興味をガッチリとつかむ見せ方で仕上げている点はさすがと言える。
誰もが少なからず抱える、心の闇というテーマを中心に据えつつ、そこにサスペンスのテイスト、役者たちの熱演と映像美が加わったことで、万人が共感できるエンタテインメントとして仕上がっている『ファーストラヴ』。ぜひ劇場で、物語の全容を見届けてほしい。
文/サンクレイオ翼