『ファーストラヴ』に込められた想いとは?北川景子、中村倫也、芳根京子、窪塚洋介、堤幸彦監督が特別座談会に集結!
第159回直木賞を受賞した島本理生の同名小説を堤幸彦監督が映画化した『ファーストラヴ』(2月11日公開)。アナウンサー志望の女子大生が父親を刺殺するという衝撃的な幕開けから、次第に登場人物たちの抱える過去の傷や痛みが明らかとなるサスペンス・ミステリーで、豪華出演者陣の熱演に圧倒される作品として仕上がった。そこでMOVIE WALKER PRESSでは、北川景子、中村倫也、芳根京子、窪塚洋介、堤幸彦監督による特別座談会を敢行!ここでしか観られない座談会動画と共にお届けする本インタビュー。この前編では、それぞれの役作りに秘められた想いを明かしてもらった。
「登場人物たちの痛みに向き合うことで、新しい経験になった」(堤)
公認心理師の主人公、由紀(北川)が、ある父親殺害事件の容疑者である女子大生、環菜(芳根)と面会を重ねるうちに、自分自身の過去の記憶につながる意外な真相にたどり着くさまを描く本作。由紀と共に事件に迫る敏腕弁護士役を中村、由紀の夫であるカメラマン役を窪塚が演じている。
――原作を読んだ感想、企画のオファーが来た際の感想を教えてください。
堤「正直なところ、『私にこの原作を映像化できるのだろうか』と思いました。作中に描かれている非常に細やかな女性の傷や痛みを、映像で表現するためにはどうしたらいいのだろうか。また年齢的にも私のようなおじさんが(笑)、自分の心に蓋をしてしまった登場人物たちの痛みに向き合う作品ができるのかと、不安を感じていました。自分にとって新しい経験になるなとも思いましたが、キャストの皆さんの頑張りや、スタッフさんのリサーチ力によって、その不安も徐々に解消することができました」
――女性キャストのお二人は、演じるキャラクターの心の痛みを表現することになりました。役柄について、どのような印象を持ちましたか?
北川「私が演じた真壁由紀という女性は、公認心理師という職業に就いていて、社会的にも地位があって、バリバリ働いている。我聞さんというすばらしい夫もいて、世間的に見たら、完璧でうらやましがられるような女性です。
でも実は心のなかには、人には言えない過去や傷を抱えていて。それに蓋をして、折り合いをつけて、なんとか生きている。一歩間違えると、ガラガラと崩れてしまうのではないかという印象も持ちましたので、完璧な女性だけれど、どこかに危うさや脆さがあるように表現できたらいいなと思っていました」
芳根「私は環菜役のお話をいただいてから原作を読ませていただいたので、環菜の視点で読み進めていました。多くの人が普通に親からもらっていた愛情が、環菜にとってはとてつもなくうらやましいものだったと思うと、本を読みながらもとてもせつなくなって…。『私が救えるものなら、救いたい!』という気持ちにもなりました。いま振り返ってみると、撮影しながらも、環菜に寄り添いたいという気持ちがあったなと感じています」
――中村さんは由紀の過去を知る弁護士の迦葉、窪塚さんは由紀の夫、我聞を演じています。
窪塚「我聞という男性は、自分自身が“そうありたい”と思うような人間像でもあります。我聞のような懐の深い対応ができるかといえば、僕にはできないような気がしています。僕の2歩も3歩も先を歩いているような人物だったので、オファーをいただいた時には、監督に『ちょっと寺でも行ってきます』と冗談で言っていたくらいで(笑)。“世界の果て”と“自分の住んでいる町内”がつながっていることを知っている人で、そこに佇んでいるだけで、説得力のあるような人。そういった意味でも、我聞は、僕自身が追いかけたい人でもあります」
中村「僕が経験したことがないことを、迦葉はたくさん経験しているので、どこか僕と迦葉がつながらないかと、どうしたら迦葉の肌触り、音色といったものが表現できるのかとずっと考えていました。その時間はしんどくもあり、役者としてはちょっと怖いなと気合が入りました。また、迦葉は弁護士という職業に就いているので、僕と同世代の方が監修についてくださって、法廷にも何度か足を運びました。弁護士という仕事は、見ていてもとても興味深いものでしたね」
堤「迦葉は一般的な弁護士ではなく、イケメン弁護士なんです」
中村「あはは!」
堤「だから持っているもの、身につけているものも、かっこよくて高価なもの。“イケメン弁護士”というスタイルを維持しなくてはいけないというところに、実は迦葉の闇みたいなものもあるんだよね」