島本理生の強靭なテーマを体現した『ファーストラヴ』…島本作品と映画の親和性を“読む”

コラム

島本理生の強靭なテーマを体現した『ファーストラヴ』…島本作品と映画の親和性を“読む”

北川景子が主演を務め、共演には中村倫也や芳根京子、窪塚洋介ら演技派俳優が集結した『ファーストラヴ』(公開中)。アナウンサー志望の女子大生が父親を刺殺するという衝撃的な導入から幕を開ける本作は、“稀代の問題作”とも称された島本理生の同名ベストセラー小説を原作にしたサスペンス・ミステリーだ。
本稿では、心の機微を描くことに長けた作家として数々の文学賞に輝いてきた島本のつむぐ物語と、それを原作にした映画との親和性を辿りながら、映画『ファーストラヴ』の魅力に迫っていきたい。


公認心理師の真壁由紀が、殺人事件の被告である聖山環菜を取材することから物語ははじまる
公認心理師の真壁由紀が、殺人事件の被告である聖山環菜を取材することから物語ははじまる[c] 2021「ファーストラヴ」製作委員会

「動機はそちらで見つけてください」という挑発的な言葉で世間を騒がせる容疑者の聖山環菜(芳根)を取材することになった公認心理師の真壁由紀(北川)は、夫の我聞(窪塚)の弟で、弁護士の庵野迦葉(中村)とともに、環菜が罪を犯した本当の動機を探るために面会を重ねていく。しかし二転三転する供述に翻弄されていくうちに、環菜に過去の自分に似たなにかを感じ始める由紀。そして彼女は、環菜の過去に触れたことをきっかけに、隠していた記憶と向き合うことに。

島本作品と映画、その高い親和性とは?

2001年に「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞した島本は、2003年に「リトル・バイ・リトル」で第25回野間文芸新人賞を受賞。史上最年少となる20歳での受賞は大きな話題を集め、一躍注目の若手作家の一人として脚光を浴びた。
そして、本作の原作である「ファーストラヴ」では第159回直木賞を受賞。繊細な筆致で登場人物たちのきめ細やかな真理を描きながら、読者の想像力と好奇心をかき立てる魅力的なストーリーを生みだす作風で、その人気を不動のものに。

そんな島本の小説は、これまで2作が映画化されている。まずは「この恋愛小説がすごい!2006年版」で第1位を獲得し、第18回山本周五郎賞の候補にも選出された代表作の一つ「ナラタージュ」。恋愛映画の名手として映画ファンから支持を集める行定勲監督がメガホンをとり、激しくも切ない恋愛模様を忠実に映像化。松本潤と有村架純、坂口健太郎ら人気俳優の共演でも話題を集め、興行収入12.8億円のヒットを記録した。

もう一本は、センセーショナルな表現で刊行当時に賛否両論を巻き起こした「Red」。10年ぶりにかつての恋人と再会した主人公が、激しい恋を通して自身の生き方を見つめ直していくという物語を、モントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリを受賞するなど国際的に評価の高い三島由紀子監督がメガホンをとり、黒沢清監督の愛弟子としても知られる池田千尋の脚本で映画化。原作の世界観を尊重しつつも映画ならではの脚色を加えたことが功を奏し、劇場公開時にはR15+指定作品としては異例の、女性層を中心に高い支持を集め、息の長いヒットとなった。

そして3作目の映画化となる本作では、「金田一少年の事件簿」シリーズや「池袋ウエストゲートパーク」、「TRICK」シリーズなど、1990年代から30年近くにわたり人気テレビドラマを数多く手掛け、映画界でも第一線で活躍する堤幸彦監督と、平均視聴率30.8%を記録した「ラブジェネレーション」から、近年の『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)まで様々な愛のかたちを描いてきた脚本家の浅野妙子がタッグを組んでいる。そこに北川をはじめとしたキャスト陣の演技アンサンブルが加わることによって、島本作品の繊細かつ奥行きのある世界観が再現されていく。

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