なぜ、宣伝マンは真冬の樹海でハーバリウムを作ったのか?【実録映画宣伝 樹海の絆】
聖地を発見
なんとも言えない空気のなか、しばらくそのまま倒れこんでいた2人だったが、黙って手を取り起こし合うと、荷物の雪を払って再び歩き始めた。
転職と新卒という差はあれど、同時期に入社したKさんとTさんはチームとして2人3脚で作品に向き合うなかで、年齢差を感じさせない姉妹のような関係を築いてきた。2人は不測の事態やトラブルに対処するたび、折れそうなお互いを励まし合い、酒を酌み交わしてきたのだった。
例えケンカをしてもやるべきことを見失わない2人の背中は、お互いにしかわからない絆で結ばれているように見えた。
そんな時、Tさんが足を止める。「ここ、あそこじゃないですか?」。
あそこ、と言われて視線の先に目をやると、林のなかに見覚えのある地面の隆起がある。そこは『樹海村』のクライマックス、天沢姉妹が目を疑うような光景を目にするシーンのロケ地となった場所だった。
その側面には、緑色の苔がびっしりと生い茂っているのが見える。早足で駆け寄った2人は、宝物でも見つけたように地面に顔を寄せて歓声を上げ、お互いに微笑みあった。
ロケ場所での幸運に遭遇したTさんは、「清水監督のおかげスかね」と、清水崇監督に導かれるようにたどり着いたことへの感謝を口にした。
Kさんも笑顔を見せ、「そうだね、清水監督のおかげだね。ありがとう、たかし!」と監督への感謝を叫んだ。
「ありがとう、たかし!」。監督を称える2人の言葉は、雪景色の樹海に響きわたっていった。
Next
母さんに誓って、ガチです
作品情報へ