【今週の☆☆☆】成田凌に若葉竜也ほか旬な俳優集結の『くれなずめ』、アンソニー・ホプキンスの名演に驚嘆の『ファーザー』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今週は、アカデミー賞脚色賞・主演男優賞に輝いたヒューマンドラマ、友人の死に目を背ける男たちの今と過去が交錯する青春ストーリー、ある殺人事件の意外過ぎる真相に驚愕の台湾発Netflixドラマの、心にじっくり残る3本!
現実を受け止めない男たちの、かけがえのない再会の時間…『くれなずめ』(公開中)
松居大悟監督が自身の実体験をモチーフにしたオリジナルの舞台劇を映画化。メインキャストには朝ドラ「おちょやん」共演も話題になった成田凌、若葉竜也、加えて大河ドラマ「青天を衝け」コンビの高良健吾、藤原季節など、人気と実力を兼ね備えた旬の俳優たちが集結し、何気ない青春を送り、なんとなく年齢を重ねた男たちのどうでもいいけど、かけがえのない時間が描かれる。高校時代の帰宅部6人組が友人の結婚披露宴の余興のために5年ぶりに集まる。その誰もが仲間の一人が亡くなっていることを認めようとはしなかった…。友人の死を乗り越えて、前を向いて生きていこうとするのならわかるが、ここでは誰一人として現実を受け止めず、みんなであらぬ方向を向いて、ひたすらげらげら笑い合う。彼らが馬鹿をやる姿にこちらも一緒になって笑いながら、いつしか涙しているから不思議。(ライター・髙山亜紀)
2度目のオスカーを獲得したホプキンスの名演にゾクゾク…『ファーザー』(公開中)
史上最高齢で、再びオスカーを手にしたアンソニー・ホプキンス。番狂わせとも報じられたが、この名演を目にする誰もが納得するハズだ。彼が演じたのは、認知症の兆候が認められつつ、気丈にロンドンで一人暮らしをするアンソニー。長女のアンが手配する介護士をことごとく拒絶してきた彼は、アンから恋人のいるパリへ越すと告げられる。ある日、アンソニーが不審な物音に驚いて駆けつけると、見知らぬ男がソファで悠然とくつろいでいた――。
認知症や介護をテーマにした既存の作品とは、大きく一線を画した新鮮さ。アンソニーの脳を通して目の前の出来事を見る我々は、ワケが分からず“一体どうなってるの?何が真実なの?”と翻弄されながらスクリーンにかじりつくことに。それはサスペンスのようにスリリングで、ホラーのように怖くもある。傑作舞台を手掛けたフロリアン・ゼレールが、自ら初めて長編監督をした本作の、アイデアやアプローチ、その手腕に驚嘆。誰もが避けて通れない“老いと家族の現実”を真正面から描きながら、こんなエンタテインメント作品に仕上げるとは。しかも鬱々とは終わらない、温もりさえ後に残る。もちろんホプキンスをはじめ、名優たちがゾクゾクさせてくれる。(ライター・折田千鶴子)
サプライズ満載。複雑怪奇なSFミステリー…『The Soul:繋がれる魂』(配信中)
この台湾発のNetflixオリジナル映画は、猟奇的かつトリッキーなサイコ・スリラー『目撃者 闇の中の瞳』で強烈な印象を残したチェン・ウェイハオ監督の最新作。近未来の台北を舞台に、重い病気を患う検察官(チャン・チェン)とその妻である刑事が、ある大富豪殺人事件の意外な真相に迫っていくという物語だ。冒頭に映し出される呪術的な殺人現場の状況からして異様なのだが、本作は中盤以降、観る者の想像をはるかに超えたサプライズ満載の展開を見せていく。人間の心、すなわち脳や魂といったスピリチュアルな要素と、最先端テクノロジーの遺伝子操作というモチーフを融合。そこに登場人物それぞれの愛や恨みの情念を絡めたストーリーは、濃密なエモーションが渦巻く“衝撃の真実”を観る者に突きつけてくる。近未来のダークなビジュアルにも引き込まれる本格派のSFミステリー。あまりにも複雑怪奇ゆえに一度の鑑賞ですべてを理解するのは困難だが、その謎めく余韻にも浸りたい。(映画ライター・高橋諭治)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!なお、緊急事態宣言の影響により、東京・大阪・京都・兵庫・愛知・福岡の6都府県にある劇場が引き続き臨時休業を案内している。各劇場の状況を確認のうえ、足を運んでほしい。
構成/サンクレイオ翼