山下達郎の“人生の一本”とは?「日曜邦画劇場」20周年&1000回記念で「どこが好きかしか言えない」と熱弁!
日本映画専門チャンネルの看板番組として2001年の放送開始から多くの映画ファンに支持されてきた「日曜邦画劇場」。その放送開始20年と1000回目の節目を迎えることを記念し、7月4日(日)に日本映画界を代表する名匠、山中貞雄監督の『人情紙風船』(37)が放送される。それに先駆けて25日、同作を“人生の一本”と公言するシンガーソングライターの山下達郎をスペシャルゲストに招いた収録が都内で行われ、“劇場支配人”であるフジテレビアナウンサーの軽部真一とトークを繰り広げた。
毎週日曜21時から放送されている「日曜邦画劇場」では、映画の感動を“再現”し“共有”することをモットーに、日本映画史に残る名作から劇場公開されてまもない最新作まで話題の邦画作品を、かつて地上波各局で定番だった“映画の解説”付きで放送。
今回放送される『人情紙風船』は、1938年に28歳の若さで戦病死し、わずか3本しか現存する作品がない伝説の映画監督、山中貞雄の遺作。河竹黙阿弥の歌舞伎「髪結新三」を原作に、江戸深川にある貧乏長屋に暮らす人々を描いた群像劇。昨年の第33回東京国際映画祭でお披露目された<4Kデジタル修復版>を2Kダウンコンバートにてテレビ初放送する。
テレビ番組にほとんど出演しないことで知られている山下は「『人情紙風船』が放送されるということで、これは来なきゃいけないなと思いまして」と今回出演を決めた理由を語ると、「もともと日本映画が好きだったのですが、戦前の映画を観るチャンスはあまりなかった。1980年代の前半にレンタルビデオ屋で見つけ、何気なく借りて観たのが最初でした。30代の時に一番インパクトを受けた作品で、それから何十回観たことか…。映画館で上映されるたびに必ず観るようにしてきました」と、“人生の1本”との運命的な出会いを振り返った。
そして、最新の技術を駆使した4Kデジタル修復版が製作されたことについて「いい時代になりましたね」と微笑む山下は「公開当時にご覧になった方々が、こんな感じで観ていたんだなと再確認することができました」と大満足の様子。「少しでもいいコンディションで観られるのは本当に幸せなことです。ひとりでも多くの方にご覧になっていただいて、戦前の日本の映画文化がいかに情熱的だったかが伝わってくれればいいですね」と、強い日本映画愛をのぞかせていた。
さらに水道橋の古本屋に出向いて購入したという『人情紙風船』公開時の評論が掲載された「キネマ旬報」を持参した山下は、当時の時代背景から山中作品の持つペシミズムについて語り、三村明が務めたカメラの魅力や挿絵画家の岩田専太郎が美術考証を務めた長屋のセット、そして前進座の俳優たちの魅力などについて熱弁。「『人情紙風船』もう絶賛しかできないですし、どこが好きかしか言えないんです」とその思い入れの強さを明かした。
山下の熱の入ったトークの全貌は、是非とも放送でお楽しみいただきたい。なお、放送では山下は写真と音声のみでの出演となる。
取材・文/久保田 和馬