「“ビーチ”を密室に見立てる設定だけでおもしろい」謎解きタイムスリラー『オールド』を、編集部が大胆予想!
パンデミック下における、監督と娘の関係性が映画とリンクする?
西川「海外の情報を調べていたんだけど、今回はシャマランの娘2人もスタッフとして参加しているんだよね。サレカが音楽で、イシャナが第2班監督。本作のテーマに家族が絡んでくることは予想できるので、娘が成長して一緒に仕事をするようになったことによって、シャマランのなかでも心境や環境の変化があったのかな?イシャナは『サーヴァント ~』のいくつかのエピソードでも監督や脚本で参加していて、カメラワークや演出はお父さんに似ているけど、脚本はコメディタッチで笑わせにくる。サレカはミュージシャンとして活動しているので、音楽を担当したみたい」
三浦「そのお話を聞いて、シャマランと娘の関係性も映画にリンクしてくるのかな?と思いました。かつ、この作品がクランクインしたのが去年の9月頃なので、娘と一緒にパンデミック禍で映画を作ったという状況を見ても、これまでの作品以上に家族に向き合ったと考えられますね。娘たちの才能を信じることや、リスクを負ってでも映画を完成させようとした覚悟を感じます」
下田「実際、シャマランのコメントのなかにも、『本作にかかわった数百人に対する責任は私にある。困難な状況でも、スタッフが参加したいと思ってくれる場所を作ることが大事』という言葉があったんです。数か月撮影が止まった期間もあったけど、そこで考える時間ができたことで、より家族について向き合うことができたみたい。海外では娘を起用したことについての批判もあったみたいだけど、作品のテーマとシャマランの実体験がリンクしているとすれば、かなり意味のあることだと感じます」
“オールド”現象をどう描くのか?困難に向き合う物語から目が離せない!
三浦「せっかくなので最後に、それぞれが思う、もしくは観たい、『オールド』のストーリー予想をしていきますか!」
西川「こういうスリラー映画の仕掛けって、大きく分けると3パターン。1つが人体実験など人為的に連れて来られる場合、2つ目は神様とか悪魔が絡む超自然的な事象、3つ目はなにもわからないまま終わってしまうもの。このなかで個人的な希望を挙げるなら、老化が進む原因は『結局、わかりませんでした』でもいいと思っていて、その理由は繰り返しになっちゃうけど、シャマランの映画は過程を楽しむものとして享受しているので、予告編の内容をそのまま見せてくれるだけでも十分満足!」
下田「“オールド”の現象による、見た目や心の変化をどう見せてくれるのかも気になる。スタート時点から、登場人物の年齢がまちまちじゃないですか。妙齢な両親もいれば6歳の子どももいる。精神的に追い詰められた人たちが殺し合うような展開にはせず、あくまで、“オールド”による変化をじっくり描いていてほしい。死を意識した大人がそれをどう受け止めるのか、急激に体が成長する子どもたちの心はどういう反応をするのか、それらを側で見守る人たちの心境など、登場人物それぞれの心の動きを映しだすだけでおもしろい映画になるんじゃないかな」
三浦「下田さんの言葉に付け加える形になるのですが、大人からすれば歳を取ることって文字通り“オールド”じゃないですか。でも、子どもにとっては“成長”だから、そこが物語にどんな風にクロスしていくのかは気になりますね。加齢によってパワーアップする人とパワーダウンする人、わかりやすく言えばそういった構図も考えられます。子どもと大人で本作を観た時の印象は変わってくるはずなので、親子で観に行ってもおもしろいかもしれませんね。世代間の見え方の違いもあって、観たあとにいろいろと語り合いたくなる作品なのではないでしょうか」
文/平尾嘉浩