人生の暗部をあぶり出す衝撃作に心揺さぶられる!映画ファンの声で迫る『空白』の見どころ
『ヒメアノ〜ル』(16)や『BLUE/ブルー』(21)など、登場人物を丁寧かつリアルに描き、人生に差し込む光と一方に存在する暗部を浮き彫りにしてきた吉田恵輔監督。そんな彼の最新作『空白』が9月23日(木・祝)より公開される。ある女子中学生の交通事故死が、その家族や関係者たちの人生に影を落としていく様子を重厚に描く本作には、
「エンドロールが終わってから涙が出たのは初めてです。あってもいいところに、台詞がないところもすごいなと思いました。自分の信じたことを信じようと思っていたけれど、その芯が揺らぎました。でも、最後にまたそっと手を握られたような気がしました」(30代・女性)
「一言では言えないからとにかく観て!」(30代・女性)
といった熱い声が多く寄せられている。ここではMOVIE WALKER PRESS独占試写会でひと足早く鑑賞した映画ファンの生の声と共に、魅力をひも解いていきたい。
自分が登場人物の立場だったら…と考えさせられる物語
スーパーで万引きの疑いをかけられた女子中学生の花音(伊東蒼)は、追いかけてくる店長の青柳(松坂桃李)から逃れようと車道に飛び出したところ、車に轢かれて帰らぬ人となってしまう。花音の父である添田(古田新太)は、娘の無実を信じて疑わず、青柳をはじめとする関係者たちを追い詰める狂気のモンスターと化していく。このショッキングな事故をマスコミはワイドショーネタとして過剰な報道で取り上げ、青柳が過去に犯罪歴を持っているなど、尾ひれの付いた誹謗中傷が拡散。世間の批判に晒された青柳はどんどん心を病んでいき…。
ヘビーすぎる出来事に、登場人物の誰もが心に深い傷を負い、人生のどん底へと突き落とされていく。あまりに悲劇的でありながらも誰しもに起こり得るようなストーリーゆえに、登場人物を自分に置き換えて考えたという観客も多かったようだ。
「自分自身が登場人物の立場に立たされたらどうするんだろうと考えました。できることなら人を攻撃せずに、人を許せるようになりたいと。そしてもう少し生きやすい世界(SNSやメディアを含め)になってほしいなあと思った」(30代・男性)
「交通事故を起こしてしまったらどうしたらいいんだろうかとか、自分だったらどうしたらいいんだろうと考えさせられた」(50代・女性)
これらに加えて多かったのが、親目線での感想。添田は、内気な花音の言葉に耳を貸さず、威圧的な態度で叱りつけるばかりのダメな父親。父と娘の2人で暮らしていたにもかかわらず娘のことをまったく理解していなかったことを、事件を通して突きつけられていく。
「子への接し方について考えさせられる」(30代・男性)
「子どもを持つ人なら絶対にどこか共感というかそういうのがあると思う」(10代・女性)
「人の気持ちを思いやれる、話を聞いてあげられる親になりたいと思った」(40代・女性)
「“あなた、あの子のなにがわかってるの?”という台詞にハッとした」(50代・女性)
親は子どものことをなんでも知っている、という自負が崩されていく様子は、観客の心に深く刺さったようだ。