オダギリジョーと池松壮亮が対談「世界はもっと不確かで、いろんな考えが存在する」

インタビュー

オダギリジョーと池松壮亮が対談「世界はもっと不確かで、いろんな考えが存在する」

NHKで9月17日から3週連続で放送されているドラマ10「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」。オダギリジョーが長年温め続けたオリジナル企画をもとに脚本、演出、編集も手掛け、彼が信頼する個性豊かな豪華キャストが勢揃いした。そんなドラマの主演を務めるのは池松壮亮。「狭間県警」を舞台に、警察犬係である主人公、青葉一平と相棒の警察犬、オリバーが次々と発生する不可解な事件に挑んでいく、可笑しくもサスペンスフルな物語だ。

「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」は、9月17日、24日(金)、10月1日(金)の全3回で放送
「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」は、9月17日、24日(金)、10月1日(金)の全3回で放送[c]NHK


しかし、単なる警察ドラマの枠組みにおさまらないのが、オダギリのものづくりへの想いを感じる部分だ。事件やユーモアの裏側に込められたメッセージ。確かな正義とは?不確かなものは受け入れられない?失敗したらなかったことにされてしまうの?様々な問いが浮かびながら、多種多様な登場人物の言葉が脳裏に残る。さらに、キーとなる警察犬、オリバーをオダギリ自身が演じている、というのも見どころだ。「世のなかのなにが真実で、なにが虚構か。世界はとても不確かなものです」とオダギリ。先行きの見えない混沌とした日々のなかで、『アジアの天使』(21)に続き一緒にものづくりをすることになった2人は、濃密な時間を過ごしたという。本作の制作エピソードや、互いの印象などを伺った。

【写真を見る】オダギリジョー、池松壮亮が放つ唯一無二の存在感。必見の撮りおろし
【写真を見る】オダギリジョー、池松壮亮が放つ唯一無二の存在感。必見の撮りおろし撮影/黒羽政士 スタイリング(オダギリジョー)/西村哲也 ヘアメイク(オダギリジョー)/シラトリユウキ ヘアメイク(池松壮亮)/FUJIU JIMI

「オダギリさんらしい“真面目な不真面目さ”を感じる」(池松)

──池松さんは、本作の脚本を『アジアの天使』撮影中に見せてもらっていたとほかのインタビューでおっしゃっていました。初めて脚本を読まれた時の感想は?

池松「はじめは第1話だけ読ませてもらったのですが、すごくおもしろかったですね。『ある船頭の話』を撮られたあとにこういう話を書くんだなと驚きました(笑)、同時にとても興味が湧きました。脚本の随所にオダギリさんの好きなもの、思想や物事の捉え方が滲み出ていて、オダギリさんらしい“真面目な不真面目さ”を感じました。様々な選択を経てここに行き着いたことがしっかりとわかりました」

──そうしたら、主演のオファーが来た際もすんなり受け入れられて。

池松「『アジアの天使』ではオダギリさんが兄役で、僕が弟役でした。兄弟役をやっていた時の感触を、ハンドラー(警察犬の指導手)と警察犬という関係性で新たに様々なスパイスを加えつつ、うまく活かせるような気がしました。自分のなかでも、いろんな想像が膨らみました」

本作の脚本を読んだ池松は、オダギリらしい“真面目な不真面目さ”を感じたと語る
本作の脚本を読んだ池松は、オダギリらしい“真面目な不真面目さ”を感じたと語る[c]NHK

──オダギリさんがドラマを書かれるにあたり、「去年の緊急事態宣言のなか、巣篭もりと言われる生活を送りつつ、この時代に描くべき作品はなにか?と繰り返し自問しながら書いた作品です」とコメントされていました。自問自答の結果たどり着いたのは、どのようなテーマだったのでしょうか?

オダギリ「なんですかね…言葉にしちゃうと途端に安っぽくなってしまうこともありますからね…。とにかくいろいろ詰め込んでしまったのは確かです (笑)」

──私は“正義”というテーマを思い浮かべたのですが…。

オダギリ「“正義”もありますね。同時に、可笑しみがあるからこそ風刺もできるし、強いメッセージを発せられるじゃないですか。そういう意味では、人間ドラマよりもいろいろな角度から社会を見ることができたのではないかと思います。たくさんのキャラクターが出てくるのも、同じシチュエーションで、まったく違うことを考えている人を登場させたかったから。いまは『1つの物事に対して1つの正解しかない』みたいになっていると思うんですけど、世界はもっと不確かだと思います。いろんな考えが存在するのが実社会だと思うので、それを1つの物語で表したいと思いました」

「どうやってほかに負けない個性を作るか。その1つのアイデアが“人間以外の目線を作る”ことでした」(オダギリ)

池松壮亮演じる一平にのみ、“おじさん犬”に見える警察犬オリバー(オダギリジョー)
池松壮亮演じる一平にのみ、“おじさん犬”に見える警察犬オリバー(オダギリジョー)[c]NHK

──多種多様な登場人物が登場するなかで、一平にだけオリバーがおじさん犬に見える。その、オリバーをオダギリさんが扮装して演じられていることに驚きました。池松さんはどう思われましたか?

池松「最高だと思いました(笑)。世界がコロナで混乱に満ちている時にこの人は着ぐるみを着るのか!と(笑)。この国が誇る偉大な俳優であるオダギリジョーが真剣に着ぐるみを着て、真剣にモニターチェックしているんですよ。さらにそこに隅から隅まで名優たちが集まってくる。あらためておもしろい人だなあと思いましたし、オダギリさんだからできることで、オダギリさんにしか出来ないバランス感覚だと思います。オリバーをやることは、最初から決めていたんですよね?」

オダギリ「そうですね。この企画を立ち上げた段階から決めていました。警察、裁判、医療、学園ドラマという要素は、連続ドラマとして作りやすい枠組みじゃないですか。毎クール、必ずいくつかありますよね。そんななかで、自分ならどうやってほかに負けない個性を出せるか考えました。その時に、一つのアイデアとして“人間以外の目線を作り、かつそれを自分で演じる”というところに行き着いたんだと思います」

周囲の人間にはちゃんと“犬”に見えている
周囲の人間にはちゃんと“犬”に見えている[c]NHK

──オリバーらしい着ぐるみを着て、顔はオダギリさん。そのいい塩梅の風貌にも、思わずクスッとしてしまいました。

オダギリ「あのビジュアルを作る段階では、誰も正解がわからなかったんですよ(苦笑)。どこまで安っぽくしていいのか、もしくはリアルを追求したほうがいいのか。ハリウッドの『CATS』みたいにCGを使うべきなのか、コントのようなわかりやすい犬の鼻をつけようかなどいろいろ考えたのですが、試行錯誤していくうちにあの形にまとまっていきました」

池松「これまでは俳優と俳優という関係性でしたが、今回は監督と俳優、というまた全然違った関係性を経験できたことも面白かったです。プラスアルファ、ハンドラーと警察犬という異色バディとして関係性を作り上げていく過程が楽しかったですね」

■衣装協力
袖付きマント¥99,000
ロングシャツ¥62,700
オーバーオール¥113,300
ブーツ¥112,200
(すべてYOHJI YAMAMOTO/ヨウジヤマモト プレスルーム)
・お問合せ先
ヨウジヤマモト プレスルーム:03-5463-1500

関連作品

  • アジアの天使

    3.3
    199
    池松壮亮主演、チェ・ヒソ、オダギリジョーが競演を果たした石井裕也監督の人間ドラマ
    Prime Video U-NEXT Hulu
  • ある船頭の話

    3.4
    369
    柄本明演じる船頭を通して人間らしい生き方を見つめる、オダギリジョーの長編初監督作
    Prime Video U-NEXT