コメディからシリアスまで。総理が登場する映画と『総理の夫』が再現したリアルな政界シーン
「未来をあきらめない!」強い想いで国政を担う女性総理が誕生『総理の夫』
そして強い想いで邁進する女性総理大臣の姿が描かれるのが最新作『総理の夫』だ。原田マハの小説「総理の夫 First Gentleman」を、「かぐや様は告らせたい」シリーズを手掛けた河合勇人監督のメガホンで映画化。第111代の内閣総理大臣に就任した相馬凛子を中谷、その夫の日和を田中が演じ、貫地谷しほり、工藤阿須加、松井愛莉、木下ほうか、片岡愛之助、余貴美子、岸部一徳ら個性派俳優が集結した。
日和は大財閥の次男に生まれた世間知らずで鳥オタクの男性。鳥類研究所で働く彼は、野鳥観察の出張に出かける直前、多忙な政治の世界に生きる年上妻の凛子に「もしも私が総理大臣になったら、何かあなたに不都合はある?」と声をかけられる。一目ぼれをした末に結婚してから12年たった今でも溺愛する妻からの問いかけを怪訝に思いながらもそのまま出発。しかし携帯の電波も届かない孤島で10日間過ごして帰京する途中、凛子が日本初の女性総理に選出されたことを知る。
「未来をあきらめない!」という確固たる意志で行政改革への意欲を燃やす凛子。シングルマザーに厳しい社会を憂い、貧しい者にも寄り添う姿勢を見せる姿はまさに理想的なリーダーだ。一方、ファーストジェントルマンである日和はGPSによって居場所を管理され、大好きな出張もNG、そして鳥の観察に適した自宅を離れ総理公邸での暮らしを余儀なくされるなど不便な生活に。その激変ぶりに右往左往する日和の姿は笑いを誘うが、徐々に疲弊していく日和と寝る間も惜しんで働く凛子にまさかの事態が襲い掛かる。
悩んだ末に2人が選び取っていく未来とは?お互いを想い合う深い夫婦愛には誰しも胸が熱くなることだろう。
国会中継や質疑応答シーンなど、忠実に再現されたリアルな政界描写
政界を舞台とする本作では、テレビでおなじみの国会中継や質疑応答など、政治にまつわるシーンが忠実に再現されている。
まず相馬内閣発足の象徴的シーンは、見事な赤いじゅうたんが敷かれている栃木県庁でロケが行われた。そして凛子と日和が群衆の前で選挙演説をするシーンはコンベンションセンター「Gメッセ群馬」を借りて撮影。コロナ禍でのロケということもあり、エキストラは少な目にしてCGによって群衆を追加していったという。
またリアリティにはかなりこだわったという国会のシーンでは、監督のモニター横に菅総理の総理就任時の映像が参考資料として用意され、それを見比べながら中谷に演出することもあったとか。日活の谷戸豊プロデューサーは、印象に残った撮影について以下のように語っている。
「国会はスタジオでのセット撮影でした。やはりラストシーンの会見場が印象に残っています。誰でも見慣れた空間に中谷さんがいることで、物語の説得力がグンと上がる、そう考えていたために、会見場の再現には非常に注力しました。撮影当日、田中さんと中谷さんが現場を見てその再現度の高さに驚いていただいたので、演じる気分も高めてもらうことが出来たかなと思いました」(谷戸プロデューサー)
そして政界を描く上で、議員、元官僚、記者、選挙コンサルタントなどの周辺の人々に入念な取材を行い、実際に脚本を読んでもらってセリフや行動に現実との乖離がないか、あった場合は演出上どの程度までが許容範囲なのかなど確認し、バランスに気を配ったという。
またリアリティを追求したことで、思わぬ笑いを生むことも。「選挙の際に日和が身に着けるタスキですが、選挙中は本人の名前が書かれたタスキは本人しか着けられません。そんなルールがあるからこそ、『夫です。』とだけ書かれたタスキを着けることで、思いのほかコミカルなテイストを出すことが出来ました」(同)
また凛子の選挙応援に駆り出された日和の奮闘シーンでは、こんなエピソードも。
「選挙カーは特例としてシートベルトを締めなくても問題ありません。劇中でもシートベルトを締めることが原則となった今日では、非常に珍しいシーンになりました。決してルール違反ではないのでご注目ください」(同)
細部まで丁寧に再現され納得感を増した政治活動シーンにも注目しつつ、日和と凛子の愛情ストーリーを堪能してほしい。
文/足立美由紀