「おかえりモネ」で好演、若き演技派・清原果耶が魅せた10代の快進撃
NHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」でヒロインの“モネ”こと永浦百音を自然体で演じ、多くの人々を魅了した清原果耶。東京で気象予報士になる夢をかなえながらも、故郷の役に立ちたいからと、生まれ育った宮城県の気仙沼に戻る“モネ”。彼女の複雑な心の揺れを繊細に体現した清原の内省的な芝居は多くの視聴者の目を釘づけにし、ついにフィナーレを迎えた。
そんな清原は2002年1月30日、大阪府生まれ。雑誌「nicola」「Seventeen」の専属モデルを経て、2015年のNHK連続テレビ小説「朝が来た」で女優デビュー。もともとはPerfumeに憧れる歌手志望の少女で、歌とダンスのレッスンにも通っていたというが、オーディションで選ばれた『3月のライオン前編/後編』(17)でいきなり天性の演技力を開花させ、大友啓史監督をも唸らせた。
彼女は本作で神木隆之介が演じる17歳の棋士・桐山零が出会う川本家の三姉妹の次女のひなたを演じたが、前編での母親のことを思って号泣するシーンが原作コミックのファンの間でも話題に。“清原果耶”の名前をここで覚えた人も多かったはずだが、それだけでない。後編のいじめに立ち向かうシーンでは、キリッとした眼差しで泣き虫だったひなたの成長を見事に表現していたのが印象的だった。
さらに、人気コミックを映画化した3部作の完結編となる『ちはやふる-結び-』(18)では、高校1年でありながらも競技かるたの準クイーンの実力を持つ原作にはないオリジナルキャラ・我妻伊織を好演。シリーズに初めて登場する損な役回りを物ともせず、想いを寄せる綿谷新(新田真剣佑)からまったく相手にされなくても何度も「好き」という言葉を連呼し、勝負の世界では広瀬すずの演じるヒロインのちはやに並々ならぬライバル心を燃やす天才少女を成立させ、独自の存在感を確立した。
だが、清原果耶の底知れぬ表現力を持つ逸材であることを知らしめたのは、間違いなく、2018年にNHKで放送された初主演ドラマ「透明なゆりかご」で演じた女子高生アオイ役だろう。高校の准看護学科に通うアオイが3年生の夏休みに産婦人科医院で“看護助手”のアルバイトをする本作は、「命が生まれる場所」である産婦人科医院が「命が消える場所」でもあることを知った彼女が、さまざまな生と死の現場を目の当たりにしながら何もできない医師でも看護士でもない自分に苦悩し、それでも考え続け、自分の進むべき道を見つけていく姿を追ったもの。「おかえりモネ」と同じ安達奈緒子が脚本を手掛けたこの作品でも、清原はアオイが受けた驚きや衝撃、苛立ちや苦しみを嘘のない芝居で伝え、観る者の心を鷲づかみに。それが真摯で圧倒的だったことは、「東京ドラマアウォード2019」で主演女優賞に輝いたことが実証している。
ドラマの終盤に登場したNHK連続テレビ小説「なつぞら」(18)の清原に度肝を抜かれた人も多いはずだ。本作で彼女が演じたのは、幼いころに行き別れになった広瀬すず演じる姉のなつや兄の咲太郎(岡田将生)と再会する妹の千遥。涙を流して再会を喜ぶなつとは対照的に、“嬉しい”のひと言では片づけられない千遥の複雑な内面を清原はセリフに頼らず、主にこわばった表情だけで体現。凛とした佇まいでシングルマザーの設定にも説得力を持たせていたが、このときの彼女はまだ17歳。その事実を知って、素の清原と本格的女優を思わせる風格とのギャップに驚いた人も多かったのではないだろうか。
それからの彼女の快進撃は周知の通りだ。「GReeeeN」の楽曲がモチーフの『愛唄 -約束のナクヒト-』(19)では、余命宣告された主人公トオル(横浜流星)に影響を及ぼす病に侵された少女・凪を明るく表現し、彼女の輝きを永遠のものに。「人間の善と悪」がテーマの『デイアンドナイト』(19) では、プロデュースに専念した山田孝之に養護施設で生活する少女・奈々役にオーディションで大抜擢され、自らの過去と向き合い、感情を爆発するシーンで観る者を圧倒! 山田の驚きと信頼を勝ち取ったのも記憶に新しい。