『DUNE/デューン』出演のチャン・チェンが語る“台湾3大巨匠”との思い出。是枝監督とカンヌ以来のトークが実現 - 3ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『DUNE/デューン』出演のチャン・チェンが語る“台湾3大巨匠”との思い出。是枝監督とカンヌ以来のトークが実現

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『DUNE/デューン』出演のチャン・チェンが語る“台湾3大巨匠”との思い出。是枝監督とカンヌ以来のトークが実現

イベントは見晴らしの良い日比谷ミッドタウンの屋外で行われた
イベントは見晴らしの良い日比谷ミッドタウンの屋外で行われた

「すべてをコントロールできる反面、なにが撮られているのかわからない」

是枝「ホウ・シャオシェン監督のこともお伺いしたいです。チャン・チェンさんが最初に出演されたのは『百年恋歌』。何度観返しても本当に、すべてがすばらしい。ホウさんの演出は、エドワード・ヤン監督やウォン・カーウァイ監督とは違うと思いますが、どのような特徴がありましたか?」

チャン「ある意味で、ホウ監督とのお仕事もこれまでの経験をゼロに戻して再構築する作業が必要でした。彼はカメラをどこに置いているのかわからない。だからいつ撮り始められているのかこちらは理解ができないのです。そしてやはり脚本がなく、『百年恋歌』の時は3つのストーリーのあらすじを書いた紙を1枚渡され、それを理解した上で撮影が進められていきました。もうひとつの特徴として、照明を使わないということもあります。たとえば『おしゃべりをしてください』と言われても、その内容は自分で考えなければならず、その状況に自分を置いて話をする。役者自身がすべてをコントロールできる反面、なにがいつどこで撮られているのかわからない状況というのは慣れないものがあります。

『百年恋歌』のビリヤード場のエピソードは、3つあるエピソードの最初でしたが、実際は最後に撮ったものでした。もうその時にはどういうテンポで撮っていくのかを理解した上だったので、非常にスムーズでした。ホウ監督との仕事で一番大変だったのは、監督がはっきりとNGの理由を教えてくれないことです。シーンによっては数十テイクを撮ることもあるけど、どこがダメだったのかは自分で考えないといけない。自分のやり方は間違っていないという固定観念を持って臨むとうまくいかないのです」

是枝「いまの話を聞いて思い出したのが、その最初のエピソードで再会した2人がタバコを吸って表に出て、暗闇のなかで屋台でなにかを食べている。2人ともなにも語らずにただ並んで食べているのがすごく好きで、この後どうなるのかとハラハラしながら観ました。あれは何テイク撮ったのでしょう?」」


チャン「あのシーンはすごく早かったです。というのも、ホウ監督の現場では食事のシーンでは本当に食事をします。あのシーンで食べていたのはつみれが入ったスープみたいなものなんですが、食事をする時間の間に撮るということになって、すごく早く撮り終わりました」

是枝「以前台湾に行った時に、ビリヤード場のシーンと屋台のシーンが裏表にデザインされたチケットホルダーがグッズで売ってて、うれしくて買ったんです。表にはホウさんにサインしてもらったので、今度会ったら裏側にサインしてね(笑)」

「心の希望になる映画を作っていくのが、あるべき姿」

是枝「最後に、当時エドワード・ヤン監督らの作品に携わったスタッフやキャストの方々がいまの台湾映画を引っ張っている。その1人であるチャン・チェンさんは、いまの台湾映画をどのようにご覧になっていて、どのような未来像を考えておりますか?」

チャン「映画は、スタッフはもちろん観客の方々にどのように伝えていけるか。そのためには色々な要素があって、多様なジャンルの映画を作っていけることが理想的だと思います。特に最近は好みが多様化している。さまざまな世代の方々が映画を通して繋がっていく、心の希望になるものを作っていくのがあるべき姿だと感じています。映画は奇妙なもので、観た人の一生に影響を与えたり、時に人生や考え方すべてを変えるものでもあります。いまはネット配信などで見方がどんどん変わっていくと言われていますが、それでも映画そのものに詰まっているものは変わっていくことはないと信じております」

取材・文/久保田 和馬


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