歴史ミステリーや宝飾品を巡るケイパー・ストーリーなど…映画で浸る“アート”の世界
かつては敷居が高かったアートの世界も、ネットの定着も手伝って新しい才能が次々と登場。いまやアートは誰もが自由に楽しめる存在となった。そんななか、実在する作品をモチーフに自分の背中を芸術家のキャンバスとして提供した青年を描いた『皮膚を売った男』が公開中だ。そこで、実在の作家の素顔を描いた実話系からファンタジー、ミステリーからエンタメ大作まで、アートを題材にした作品をまとめて紹介する。
メトロポリタン美術館で繰り広げるゴージャスな『オーシャンズ8』
犯罪チームが華麗なだましのテクニックを披露する、オールスターキャストの大ヒットシリーズ第4弾『オーシャンズ8』(18)。今作は8人のワケアリ美女たちが犯罪ドリームチームを結成する。刑期を終え仮釈放されたデビー・オーシャン(サンドラ・ブロック)は、ハッカーやスリなどプロフェッショナルを集め、世界最大のファッションの祭典“メットガラ”に出展される、カルティエが保管する1億5千万ドルのネックレス“トゥーサン”強奪計画を実行する。
物語の舞台となるのは、毎年5月にNYメトロポリタン美術館で開催されている、VOGUE誌の編集長アナ・ウィンター主催のメットガラ。毎回多くのセレブが集まるゴージャスなイベントで、本作の撮影にあたってメトロポリタン美術館は全面協力。美術館内の撮影はもちろん、エマヌエル・ロイツェの「デラウェア川を渡るワシントン」をはじめゴッホやルソー、フェルメールなど多くの展示物がスクリーンに登場した。なおオーシャンズが狙うトゥーサン(架空のネックレス)は、パリにあるカルティエの工房が制作を担当。ダイヤこそ使っていないが、職人の技が注ぎ込まれた贅沢な小道具だ。
歴史的な名画に隠された謎に挑む知的ミステリー『ダ・ヴィンチ・コード』
レオナルド・ダ・ヴィンチの絵に隠された謎を解き明かす『ダ・ヴィンチ・コード』(06)は、原作者のダン・ブラウンが製作総指揮と脚本も務めた、ロン・ハワード監督によるミステリー大作。宗教象徴学者ロバート・ラングドン(トム・ハンクス)が渡仏中に、ルーヴル美術館内で館長が殺害される。殺人容疑をかけられたラングドンは、警察の執拗な追跡をかわしながら事件の真相を解き明かす。
本作の核になるのが、キリストと弟子たちの最後の食事を描いたダ・ヴィンチの「最後の晩餐」。ラングドンらは構図や人物の配置、色使いなど細部からダ・ヴィンチの暗号を読み解き、絵に隠されたキリストの“不都合な真実”を暴きだす。膨大な知識と洞察力、読解力はアートのもう一つの楽しみ方を教えくれる。撮影はルーヴル美術館内と、壁や柱、床のタイルのサイズまで忠実に再現されたセットで撮影。光沢から絵の具のひび割れなどテクスチャなどリアルに複製された150点もの名画が作製され、ルーヴルが体感できるのもお楽しみだ。
アートな時間旅行を描いたファンタジー『ミッドナイト・イン・パリ』
パリを舞台に繰り広げられる、アート満載のロマンチック・コメディが『ミッドナイト・イン・パリ』(11)。監督&脚本のウディ・アレンは、第84回アカデミー賞脚本賞に輝いた。芸術好きなロマンチストで、ちょっぴり夢想家の脚本家ギル(オーウェン・ウィルソン)は、リアリストの婚約者やその家族とパリを訪問。深夜、一人ホテルに帰る途中で迷子になった彼は、なぜか1920年代にタイムスリップしパブロ・ピカソの愛人アドリアナ(マリオン・コティヤール)と恋に落ちる。
映画はパリのアートスポットが満載。「モネの庭」のモデルになったジヴェルニーの庭園、モネの「睡蓮」が壁を埋めるパリのオランジュリー美術館、「考える人」がそびえるロダン美術館、ベルサイユ宮殿とその庭園など美しいロケーションの数々は圧巻だ。ギルが迷い込んだのは多彩な文化が咲き乱れ、狂乱の時代と呼ばれた1920年代のパリ。スコット・フィッツジェラルドやアーネスト・ヘミングウェイら文豪から、ピカソやサルバドール・ダリほか多彩な芸術家との交流も見どころ。