『マリグナント 狂暴な悪夢』にも影響をもたらした!ジェームズ・ワンが愛する怖〜い映画&監督たち

コラム

『マリグナント 狂暴な悪夢』にも影響をもたらした!ジェームズ・ワンが愛する怖〜い映画&監督たち

ソウ」や「インシディアス」、「死霊館」といった大ヒットホラーシリーズを次々と生みだしてきたジェームズ・ワン監督。最近は『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15)や『アクアマン』(18)などのアクション大作を手掛けていたこともあり、製作として数々の作品に携わっていたものの、ホラーの監督を務めたのは、2016年の『死霊館 エンフィールド事件』が最後となっていた。「死霊館」シリーズはジェームズ・ワン製作のもとユニバースとして拡張を広げており、最新作『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(21)は、12月15日より先行ダウンロード販売が始まったばかり。

【写真を見る】ホラー界きってのヒットメーカー、ジェームズ・ワン監督のお気に入りの作品とは?
【写真を見る】ホラー界きってのヒットメーカー、ジェームズ・ワン監督のお気に入りの作品とは?[c] 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

そんなワンが久々に監督したホラー映画『マリグナント 狂暴な悪夢』(公開中)は、ダリオ・アルジェントやブライアン・デ・パルマ、ウェス・クレイヴンらのホラーサスペンスからインスピレーションを受けている趣味丸出しとも言うべき1作だ。ここではワンが過去にインタビューなどで公言してきたお気に入りの作品をチェックしていきたい。

1970〜90年代のホラー、スリラーへの愛情が炸裂する『マリグナント 狂暴な悪夢』

目の前で殺人が起こる悪夢に苛まれる女性が、自らの秘められた過去を知ることに…(『マリグナント 狂暴な悪夢』)
目の前で殺人が起こる悪夢に苛まれる女性が、自らの秘められた過去を知ることに…(『マリグナント 狂暴な悪夢』)[c] 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

暴力的な夫に悩まされていた女性マディソンは、夫が何者かに惨殺された日を境に、黒いコート姿の人物、ガブリエルが目の前で殺人を犯す悪夢を見るようになってしまう。しかも夢で見た殺人は現実とリンクしていることが判明。その謎を解決して殺人鬼を止めようと、妹と共に自らの秘められた過去と向き合っていく。

ニューヨークで活躍する女性ファッション・カメラマンを巡って起こる連続殺人事件が題材の『アイズ』
ニューヨークで活躍する女性ファッション・カメラマンを巡って起こる連続殺人事件が題材の『アイズ』[c]Columbia Pictures/courtesy Everett Collection

『マリグナント 狂暴な悪夢』には、1970〜90年代のホラー、サスペンス、スリラーのテイストが存分に盛り込まれており、例えば悪夢が現実になるというプロットは、アービン・カーシュナーの『アイズ』(78)そのもの。加えて、夢の中で暗躍する殺人鬼は、好きなホラー10選の一つに挙げているクレイヴンの『エルム街の悪夢』(84)を連想させる。

テレキネシスを持った少女キャリーが引き起こす惨劇を描いた青春ホラー『キャリー』
テレキネシスを持った少女キャリーが引き起こす惨劇を描いた青春ホラー『キャリー』写真:EVERETT/アフロ

『スキャナーズ』は、思考するだけで人間を破壊する超能力を持つ“スキャナー”たちを描くSF作
『スキャナーズ』は、思考するだけで人間を破壊する超能力を持つ“スキャナー”たちを描くSF作写真:EVERETT/アフロ

また映画のオープニングで登場するある人物が使う“超能力”は、デ・パルマの『キャリー』(76)やデヴィッド・クローネンバーグの『スキャナーズ』(81)を思わせ、ネタバレを含むため詳しくは言えないが、デ・パルマの『殺しのドレス』(80)、『レイジング・ケイン』(92)的な要素もあったりと、この時代のホラー、サスペンスを混ぜ合わせたユニークな1作となっている。

ジェームズ・ワンが敬愛する2大監督はアルジェントとリンチ!

赤を基調としたライティングなどジャッロ映画から多大な影響を受けている(『マリグナント 狂暴な悪夢』)
赤を基調としたライティングなどジャッロ映画から多大な影響を受けている(『マリグナント 狂暴な悪夢』)[c] 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

イタリアの鬼才、ダリオ・アルジェントによるゴシックホラーの金字塔『サスペリア』
イタリアの鬼才、ダリオ・アルジェントによるゴシックホラーの金字塔『サスペリア』[c] 20th Century Fox Film Corp. All rights reserved. Courtesy: Everett Collection.

そのなかでも『マリグナント 狂暴な悪夢』に多大な影響を及ぼしているのが、「ジャッロ」と呼ばれるジャンルだ。簡単に言うならばイタリアのホラー、スリラー作品で、鮮血が飛び散る凄惨な殺人シーン、スタイリッシュな映像やサイコロジカルな題材が持ち味。アルジェントやマリオ・バーヴァらの作品が代表される。

旅先で謎の連続殺人事件に巻き込まれた男の冒険を描くサスペンス・スリラー『歓びの毒牙』
旅先で謎の連続殺人事件に巻き込まれた男の冒険を描くサスペンス・スリラー『歓びの毒牙』写真:EVERETT/アフロ

本作ではアルジェントの『サスペリア PART2』(75)や『歓びの毒牙』(70)を思わせるようなコート&手袋という殺人鬼のルックをはじめ、赤を基調としたライティング、主人公が自力で謎に迫る展開、フーダニット(Who done it=誰が犯行をおこなったか)にこだわる物語、とジャッロのスタイルが存分に踏襲されている。

ワンが敬愛するアルジェント作品のなかでもお気に入りとして何度も言及している『サスペリア PART2』
ワンが敬愛するアルジェント作品のなかでもお気に入りとして何度も言及している『サスペリア PART2』写真:EVERETT/アフロ

ワンは『ソウ』の頃から、アルジェントを尊敬していると公言しており、なかでもピアニストがとある殺人事件に巻き込まれていく『サスペリア PART2』に関しては、好きなホラー作品を聞かれた際には、ほぼ毎回挙げてきたほどの寵愛ぶり。「大きな衝撃を受けた」と語っている。

その影響は『マリグナント 狂暴な悪夢』以前にも見ることができる。たとえば『サスペリア PART2』では不気味な人形が観客をゾッとさせるが、ワン作品にも「ソウ」シリーズのビリー人形をはじめ、『デッド・サイレンス』(07)の腹話術人形、「死霊館」シリーズのアナベル人形など、印象的な人形が登場している。ワンのフィルモグラフィーの影に、常にある1作なのだ。

「ソウ」シリーズのビリー人形など、ワンの作品には人形がたくさん登場するが、それも『サスペリア PART2』の影響?
「ソウ」シリーズのビリー人形など、ワンの作品には人形がたくさん登場するが、それも『サスペリア PART2』の影響?[c] Lions Gate/courtesy Everett Collection

アルジェントと並んで「大のファンだ」とワンが語っているのがデヴィッド・リンチだ。なかでも『ロスト・ハイウェイ』(97)は、ホラーではないが、怖い映画としてインタビューで何度も触れてきた1作だ。

ワンはデヴィッド・リンチの大ファンであり、特に『ロスト・ハイウェイ』は大好きな1作だそう
ワンはデヴィッド・リンチの大ファンであり、特に『ロスト・ハイウェイ』は大好きな1作だそう写真:EVERETT/アフロ

「ビル・プルマンがパーティーでロバート・ブレイクと出会う場面は、最も不気味でクールなシーンの1つ」、「断片化された物語、騒々しい雰囲気、陰湿な音景、ダークな撮影が合わさり、リンチ的体験となる」とコメントを残しており、リンチの超現実的な世界観は『ソウ』にも受け継がれているようだ。

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