『レット・イット・ビー』から『Get Back』へ…見比べて深まるザ・ビートルズが解散へと向かった真実

コラム

『レット・イット・ビー』から『Get Back』へ…見比べて深まるザ・ビートルズが解散へと向かった真実

「ロード・オブ・ザ・リング」&「ホビット」三部作などで知られるピーター・ジャクソン監督が、途方もない音楽ドキュメンタリーを作り上げた。解散から40年を経てもなお色褪せることのない伝説のロックバンド、ザ・ビートルズの「ゲット・バック・セッション」を描いた『ザ・ビートルズ:Get Back』(ディズニープラスにて配信中)である。

『ザ・ビートルズ:Get Back』はディズニープラスにて全3話見放題で独占配信中
『ザ・ビートルズ:Get Back』はディズニープラスにて全3話見放題で独占配信中[c]2021 Disney [c]2020 Apple Corps Ltd.

『ロード・オブ・ザ・リング』の監督が描く、総尺7時間半の濃密ドキュメンタリー

なにが途方もないかって、まずはボリュームがスゴい。「ゲット・バック・セッション」とは、すでに解散が噂されていたザ・ビートルズのメンバー、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリソン、リンゴ・スターの4人が1969年1月に集合して、バンドを再起動させようと試みた1か月間のセッションのことだ。

誰もが知っている歴史的名曲が完成するプロセスも映しだされている
誰もが知っている歴史的名曲が完成するプロセスも映しだされている[c]2021 Apple Corps Ltd. All Rights Reserved.

当初の構想では、2週間でニューアルバム分の新曲を完成させ、ザ・ビートルズとしてはおよそ2年4か月ぶりにライブ演奏を披露するテレビ特番を収録するはずだった。そして映像パートの監督としてマイケル・リンゼイ=ホッグが雇われ、ほとんど一部始終がドキュメンタリー映像として記録されていた。

紆余曲折があってテレビ特番は取り止めになり、1969年の1月30日、ザ・ビートルズは自分たちが設立した会社アップル・コアのビル屋上でゲリラライブを行う。ザ・ビートルズの楽曲をベースにしたミュージカル映画『アクロス・ザ・ユニバース』(07)を筆頭に、屋上でバンド演奏するあらゆる映像は、この時の屋上ライブのオマージュがパロディと言っていい。そしてこの日の屋上ライブが、4人が人前でそろって演奏した最後の機会になった。


2週間でニューアルバム分の新曲を完成させ、2年4か月ぶりにライブ演奏する模様を記録したテレビ特番になるはずだった『レット・イット・ビー』
2週間でニューアルバム分の新曲を完成させ、2年4か月ぶりにライブ演奏する模様を記録したテレビ特番になるはずだった『レット・イット・ビー』写真:EVERETT/アフロ

ホッグは、この時の映像を80分ほどの映画『レット・イット・ビー』(70)としてまとめ、1970年8月に日本でも劇場公開されている。しかしジャクソンは、この時にホッグが撮影していた55時間以上の未発表映像と、150時間もの未発表音源を丹念にデジタル修復して、まったく別のドキュメンタリーを完成させてしまった。三部構成になっており、全編を通して観ると7時間半を超える。だが「長すぎる!」と思うなかれ。これが退屈など無縁の、お宝映像を満載した超濃密な作品に仕上がっているのである。

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